第35話 集会閉幕
「うおおおおお!!!」
俺はグランドに猛突進!!!
怒りに任せた、俺の拳がグランドに向かっていく!!!
「駄目だよ!!! シリウスくん!!!」
ライムは必死で止めに入るが、俺は止まらない。
その時!!!
《ガシッ!!!》
突然、何者かに尻尾を掴まれて止められた。
振り返ると、なんと、エミリアだった。
「クソッ!!! 何しやがる!!!」
「そろそろ喧嘩はおしまいにしようね……」
コイツ!!! なんて力だ!!!
五百キロ近い体重の俺を、片手で止めやがった!!!
しかも、いくら動こうとしてもビクともしねぇぞ!!!
「離せ!!! エミリア!!! 俺はアイツを一発ぶん殴って……」
「これ以上動いたら、これ、引きちぎるよ……!」
この時のエミリアは、禍々しいオーラに覆われていて、物凄い殺気を帯びた目つきで俺を睨みつけていた。
「……!」
そのとたん、俺の中から怒りが消えていき、同時に恐怖が芽生えたのを感じた。
俺は無言になり、地面に片膝をつけた。
「よろしい。グランドの事はわたしに任せて」
エミリアは俺がおとなしくなったのを確認すると、笑顔でそう言った。
「エミリア……」
エミリアは座り込んだ俺の背中をポンッと叩くと、グランドと対峙する。
「グランド……あなたがモンスターを嫌うのはわかってる」
「でも、シリウスくんはこの先のグロリアにとって必要なの」
「しかも、シリウスくんは、自ら誰かの為に自分を犠牲に出来る。それは。弱肉強食の世界で生きているモンスターどころか、わたし達人間にも出来る人は限られているんだよ。そんな特別なスキルを彼は持っているの」
「それに、彼は日に日に成長している。場合によっては、いずれこの世界の常識を覆す、そんな冒険者になるかもしれないよ」
すると、エミリアの話を聞いていたグランドが口を開いた。
「くだらん。話にならねぇな」
グランドはそんなことを呟くと、エミリアに向かって宣言する。
「エミリア!! テメェがこんな奴にこれ以上肩入れすんなら、こんなチーム辞めさせてもらうぜ!!!」
コイツ!!! ついには脱退宣言かよ!!!
「大体、最近のリフレクターには嫌気がさしていたからな、丁度いい機会だぜ!!!」
グランドはそう言い放つと、グロリア冒険団の公認バッジを握りつぶしてしまった。
「グランド……本気なんだね!!? このバッジを壊すという事は、敵対を示すという事だよ!!」
「ああ!! これで俺達は敵同士だな!! 上等だぜ!! これで、この醜いモンスターと顔を合わせなくて済むからな!!」
「グランド!!!」
グランドはエミリアに背を向けると、教会を後にした。
「マジかよ……アイツ本当に出ていきやがった」
俺は想像していなかった展開に呆然としていた。
「シリウスくん……ありがとう……わたしたちの為に怒ってくれて」
「良いんだよ。お前こそ、止めようとしてくれてありがとな!」
俺達はお互い感謝した。
こうして、団員としての初の集会は、大荒れとなって幕を閉じた。
集会終了後、俺はエミリアを尋ねた。
「エミリア、ちょっといいか?」
「ん? どうしたの?」
エミリアはさっきまでのピリついた感じが嘘の様に、やわらかい表情になっていた。
「マインから伝言を預かったんだ。短い言葉だったけど、まだ伝えていなかったから……」
「『どんなに辛くても自分をしっかりと持ってください』って、アイツは言ってたよ」
俺がそう伝えると、エミリアは目を見開いて呆然としていた。
「たったそれだけだけど、それを言ったアイツの表情は晴れ晴れしてたよ」
「じゃあ、俺はこの辺で……また明日な!」
俺はそう言って走り出した。
「マイン……ちゃん!!」
「ぐすっ……うぅぅぅ……」
オリビアが言うには、集会後エミリアは一晩中号泣していたそうだ。
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