第21話 海底神殿へ

 運命のリバイアサン討伐作戦の決行日となった! 俺達三人と総帥エミリア、副将オリビアに、二番隊隊長のソフィアも加わり、計六人で、港に着いた。


「船の舵取りは私に任せて! 船はお父さんのを使うから!」


 そういえば、ブラッドさん昔は漁師だったんだよな。

高齢になってきて、漁に行く体力がなくなってきて、引退したって聞いたぜ。


「それで、船の舵取りはお前がやるとして、リバイアサンのいる場所、海底神殿にはどうやって行くんだ? 確か海の底なんだろ?」


「当然、潜っていくわ。私とシリウスは水中で呼吸ができるとして、後の四人はこれをつかって」


 俺の質問に、ソフィアがそう答えて手渡したのは、何か青いガムの様な物だった。


「これは、ウォーターガムといって、水中のダンジョンを探索する際に使うアイテムよ」


「これを口にすれば、水中で息ができるわ。ただし、効果は十時間までよ」


 つまり、タイムリミットは十時間という訳か。

時間に猶予は無いって感じか。


「私は船に残るぞ」


 すると、オリビアが船に留まると宣言した。


「おいおい、どうしたんだ? ビビってんのか?」


 俺はニヤニヤしながら、オリビアを茶化す。


「そういう訳ではない。もし、お前たちが帰ってこれなくなった時、誰が国に連絡するんだ? この依頼は国務なんだぞ」


「それに、この船は、ソフィアのお父様の形見だ。こんな海の上で放置する訳にもいかんだろう」


 そうだった、これ国務なんだ。

しかも、この船はブラッドさんがソフィアに託した物か……だとしたら尚更だな。


「わかったよ。この船に何かあっても困るしな。任せたぜ、オリビア」


 こうして、俺達六人は港から出航し、数時間かけて、リバイアサンの潜む海底神殿のある海域に到着した。


「到着したわ。みんな、覚悟はいい?」


 ソフィアが改めてそう聞くが、俺は即答した。


「あるに決まってんだろ。俺達はそのために準備してきたんだ!!」


 ライムも


「わ、わたしは副隊長として、精一杯サポートし、隊長をお守りします!!」


 マインも


「わたし達、ここまで来たんだよ!! 絶対勝つ!! みんなで生きて帰ろうね!!!」


 総帥は


「まず、こんな危険な任務を引き受けてくれて、ありがとう。そして、これだけは忘れないでね、あなた達の命はわたしの命、みんなの命運はわたしが全て背負っているから」


「リバイアサンは、わたし達みんなで必ず討伐する!! だからお願い、力を貸して!!!」


 俺達の覚悟はもう決まっていた!! これはただの任務じゃねぇ!!! うちの命運を掛けた戦いだ!!!


「ええ、その意気よ!!! 必ず勝って帰ろうじゃない!!!」


 ソフィアはそう言って、ニヤッと笑い、拳を高くつき上げた。


「さあ!! 行くわよ!!!」


 マイン、ライム、そしてエミリアはウォーターガムを食べ、俺達五人は海に飛び込んだ。

エミリアはソフィアに、マインとライムは俺に摑まる。


「海底神殿まで、どれぐらいで着くんだ?」


「そうね。海底神殿は三千メートルの深海にあるし、このペースだと一時間はかかるわ」


「マジかよ!!? すげぇ深海だな!!」


「それはそうよ。伝説のリバイアサンの住居なんだから、それくらい難しいダンジョンでしょう。だから、水中ライトは手放せないわね」


 水中ライトを持つ、ソフィアに俺は続く。二十分もすると辺りは暗くなり、深海らしくなってきた。


「寒い……」


 マインは寒いのか、体が震えていた。


「大丈夫ですか!!?」


 ライムは心配して、マインの両肩に両手を当てる。


「う、うん! ちょっと寒くなって来たけど、大丈夫だよ!」


 マインは、あまり寒さには強く無い様だ。


「これ、使うか?」


 俺が取り出したのは、ヒートハーブという薬草で作られた塗り薬だ。

これを塗ると全身がすぐに温まる。

本来、雪原などのダンジョンを探索する為に使うが、俺は水陸両用の奴を事前に買っていた。


「いいの? ありがとう!」


 マインは笑顔で受け取ると、体の冷えている所に塗った。

マインが俺の母さんと分かった今だと、なんか気恥ずかしい気分だが、当の本人は満更でも無い様子だった。








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