第18話 冒険者体験コース

 そして、俺達は座学を終えると、魔法を使った実技を行った。

マインによれば、三種類の魔法の中で強化魔法が一番簡単で、次に攻撃魔法、補助魔法はある程度の知識と技量が無いと使うのは厳しいんだとか。

俺は魔法を一週間練習し、基礎的な魔法はいくつか使えるようになった。


「じゃあ、そろそろダンジョンに行ってみようか」


 ダンジョンか……少し不安だが、マイン達が居れば大丈夫だろ。


「一応、シリウスくんは、これを使って」


 俺はマインから人一人分ぐらいのサイズの剣を渡された。


「お、重い……!!」


「これは巨人族の子供が使っている剣。あなたの体格に合ってると思ったんだけど……」


 なんと、俺は剣を振るどころか、まともに持つことも出来なかった。

クソッ何で俺は力が弱いんだよ。

これじゃ、ただのデカい的だろ!!


「正直、素手のほうがいいと思うわ。俺に適正な武器はなさそうだし」


「そもそも、俺モンスターだしな。そっちの方が性に合ってるよ」


 マインは心配している様子だったが、俺がうまい事丸め込んだ。

そして、俺達は初心者向けのダンジョンである、『混沌の林』へと向かった。


「ここが、そうだよな?」


 イスペルダムから少し外れた所に『混沌の林』はあった。

俺はついにダンジョンへと足を踏み入れた。


「ダンジョンにはモンスターがいるから、注意してね。襲ってくるよ」


 すると、マインの忠告通り、虫型のモンスターが襲ってきた。


「これは、アリ型のモンスター『プライムアント』だよ!! これぐらいなら、丁度いいかも、わたし達が見てるから、戦ってみて!!」


「わかった!!」


 そうだ、俺はリバイアサンを倒すって決めたんだ。

こんな所でビビってられるかよ!!


「『ブースト』!!!」


 俺は、プライムアントの攻撃をかわす。

そして横から、教えられた通りに『ブースト』を発動し、プライムアントを蹴り飛ばした。


「『ブースト』の加速を利用して一撃を入れたね」


 マインは解説する。

吹き飛んだプライムアントはダメージで動きが止まっていた。


「今だ!! くらえ!!!」


 俺は攻撃魔法『フレイム』を発動。このモンスターは風属性の為、相性抜群だ!! 攻撃を食らったプライムアントは戦闘不能。

俺の勝利だ。


「しかし、良かったのか? モンスターとはいえ怪我させてしまって?」


「プライムアントは数も凄く多いし、農作物への被害とかも多いからね。それに、戦闘不能になっただけで、死んでは無いし、モンスターは傷の治りが人間より早いから大丈夫だよ」


 なる程、それなら良かったけど。


「でもリバイアサンは、依頼内容が『討伐』だから、完全に殺さないとダメですよね?」


 ライムが話を振る。


「うん、そうだよ……」


 嘘だろ!!? 今のでも死んで無いんだぞ!! リバイアサンなんてもっとタフだろうし、本当に勝てんのか!!?


「でもね……依頼を引き受けた以上やるしかないよ」


 マインは真剣な表情でそう言った。


「でも、大丈夫!! わたしはあなた達を絶対に死なせない。命に代えても必ず守るって約束する」


「だって、あなた達は、わたしの大事な部下だから!!」


 マインはそう宣言すると、ニコッと笑顔を浮かべた。


「マインさん……」


 ライムはすでに泣きそうだった。


「ああ、俺達も最大限の努力をするよ!! 少しでもお前の役に立つようにな!!」


「うん。でも無理だけはしないでね」


 マインちゃんは本当に優しい娘だな。

道理でライムがここまで慕う訳だ。


「取り敢えず、奥に進もうか。ある程度進んだら帰ろうね」


「おう!!」


 こうして、俺達は向かってくるモンスターを倒しながら、進んでいった。

そして、日が暮れて今日の冒険者体験コースは終了した。





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