動画投稿始めたら女装させられてたんだけどっ!?
かみさん
プロローグ
なんで女装させられてんの……
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁっ!!」
閑静な住宅街。
そのアパートの一室で叫び声が響き渡った。
「……なっ、なんで……? えっ? 嘘だろ……!?」
叫び声をあげていたのは一人の少年。
全身の震えが止まらない。
それでも少年は震える手をどうにか机に押さえつけて、その右手に持ったスマホへ目を向ける。
そこには——
『今日はもう皆見えていると思うけど、私の隣にいる子の紹介をする動画だよっ!』
二人の美少女が映っていた。
一人はキレイな金髪を後ろに束ねている少女。
彼女は動画の趣旨を説明しながら人懐っこい笑顔を振りまいていた。
『まあ、本格的に投稿を始めるのはまだ先なんだけど……とりあえず紹介を先にしようと思ってね』
ここまでは問題ない。
いや、最初から問題だったけどそこじゃない。
目を背けたいという葛藤を押し殺して少年が画面を凝視すれば、すぐに動画内では動きがあった。
『じゃあさっそく紹介するね! 私と一緒に動画に出ることになったスイだよ!』
『よ、よろしく……』
金髪の少女の言葉と共に画面が黒髪の少女にフォーカスされる。
すると、明らかに動画慣れしていない彼女は緊張した面持ちでペコリと頭を下げた。
お洒落な服装の金の少女に比べて、黒髪の少女の服装は白のYシャツとデニムパンツとシンプルだ。
しかし、艶のある黒のショートカットにすらりと伸びた手足。なにより、十人中十人が振り向くと言っていいほどの美貌。
そのおかげで隣に座っている金の少女と並んでも違和感がないものとなっていた。
クールな印象というのだろうか?
少年が画面の端に視線をずらせば、そんな彼女へのコメントが早くも賑わいを見せ始めている。
そして、少年が再び動画に視線を戻せば。
『そんな緊張しないで!』
緊張を解すためか、金髪の少女は隣の少女へ微笑みかけながら背中を軽く叩いていた。
『初めてなんだから失敗してもいいんだって! 今回は顔見せなんだし、もっと笑顔を見せて! ね?』
『は、はい……頑張ります……』
ガチガチに緊張しながらも、一生懸命にカメラに笑顔を向けようと必死に顔を歪ませている少女。
彼女こそ、少年の悩ませている元凶だった。
「…………」
少年は動画から目を離すと両目をゴシゴシと擦る。
「夢だったらいいのに……」
現実逃避の一言をポツリとこぼす。
しかし、画面には依然として黒髪の少女が下手な笑顔を振りまいていて。
「ハァ……いや、ほんとに……」
楽しげな動画の雰囲気とは対照的な暗い息が漏れた。
そして、ついに直視していられなくなった少年は顔を上げる。
目に映すのは白い天井。
次は右に。
最後に左を向けば、そこにはほとんど使われていない姿見が置かれていた。
「…………」
鏡を見たのはいつぶりだろうか?
少年は嫌そうな顔を隠そうともせずにそれを凝視する。
そこには——
薄い黒の寝間着に、風呂上がりのせいか少し濡れて光を反射する黒のショートカット。そして、疲れた表情をしながらも薄れることのない美貌。
それは、印象は多少違うけれど今画面に写っている少女にどこか似ていて……
「なんで……」
少年は画面と鏡で何度か視線を往復させる。
画面の少女と今の自分の姿。
印象の違いはあるけれど、両者には大きな違いは見つけられなかった。
「ハァァァァ………………」
深く息を吐き出してみても暗い気分は晴れない。
少年は悲しげに天を仰ぐ。
「なんで俺……女装させられてんの……?」
作者の挨拶——
まだまだ勉強中の身で、至らないところも多々あるとは思いますが少しでも「面白そうだな」と思った方がいましたらフォローや★、感想などをいただけたら幸いです。
又、こうした方が良いなどのアドバイスをいただけると嬉しいです。
これから精進していきますのでよろしくお願いします。
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