第3話 多くない!?
突然だが俺はある場所に向かって歩いている。
それはバイト先だ。
まぁバイトって言ってはいるが実際はお手伝いみたいなものだ。
立地もかなり良い、なんせ駅前すぐの場所だ。おじさんがこの場所取るの苦労したんだぜって言ってたのを思い出す。
学校から家まではだいたい800メートルくらい。そして俺の家は駅から近いのでめっちゃ通いやすい。生活費の足しみたいなもので初めたバイト(お手伝い)だが、今では退屈を紛らわすのにも便利で、最近シフトを増やした。
ん?恋愛相談?
「この後、バイトあるし。また今度でいいか?」
って言ってまた今度にしてもらった。ただその後
「また連絡したいので、連絡先交換してもらっても良いかな?...........異性の人と連絡先交換するの始めてで緊張してますけど」
と言ってからスマホを取り出し......
「ほら?フリフリしましょ?」
上目遣いでそう言って俺を見上げる彼女に俺は...................
もちろん連絡先を交換してもらった!
まぁニヤケを抑えるので必死であんまり覚えてねえけど
事実として俺はあのアイドルと連絡先を交換したのだ...........
そう俺だけが!他の奴らはもらってないのに!俺が!
ファンの奴らには申し訳ない.......なんてこれっぽっちも思っちゃいない
我が選択に一片の悔い無し!!
ってやつだ。
てかそれよりも恋愛相談か.........
全く好きな人居る素振り見せてなかった
四人のアイドルの内1人に片思い発覚と......
俺は全然入れ込んでなかったけど、ファンの奴ら知ったら泣きそうだな........
あいつらの泣き顔ねぇ............アリだな。
ぜひとも写真に収めてぇなwww
なんてバカなこと考えてる内に店の前まで来ていたようだ。
ここはカフェテリア『オレオレオ』
なんか某有名なお菓子みたいな名前だがそうじゃない。
れっきとしたカフェだ。
20坪くらいの面積で結構大きい
個人経営で儲けてんのか?って思って昔聞いてみたけど
これでも儲けてるらしい。ここらへんで一番?ウソつけならバイト代増やせ
外観は結構おしゃれで黒をベースにした洋風チックな店は駅からでも十分目立つ。
店内はヴィンテージチックに彩られており、店長(おじさん)の手腕が光る。
しばらく店の外をぼんやり眺めているといっつも聞いているうるせぇ声が聞こえてくる。これだけなければただバイト代がまぁまぁ高くて通いやすい店だってのに
ガチャン!と音が鳴って扉が開く。店の出入りを知らせる鈴が大きく鳴り響きその少女といっても差し支えないだろう体躯の子が現れた。
「セイー!!!なんで店の前で突っ立ってるの!??お客さんの邪魔になってるよ!早く店入って働けぇぇぇ!!!」
彼女の名前は目の前にいるこの少女、
「はいはい分かってるよ.......お前も声落とせよもう20なんだから」
「ムキィー!!っ私の体がこんなプリティだからってっ子供扱いするなぁぁ!!!」
「はいはい綺麗、今日もほんとに綺麗だね美久は」
「よろしい!さぁササッと着替えて仕事についてねっ!!」
まじで................チョロすぎだろ。
❖☖❖☖❖
「あのさぁいつも思うんだけどなんで毎回ここでワックスとかコンタクトとかしなきゃいけないわけ?」
「カウンターに立つ人間が、こんなダッサイ眼鏡付けてカフェの店員やってたらおかしいでしょ?それに............カッコいいし」
「お前もうちょっとハキハキと喋れよ。最後全然聞こえなかったぞ?」
「うっさい死ね!!!さっさと持ち場着け!!」
ガチャン!!と大きな音を立てて更衣室を出ていった。
ヘアワックスで前髪を整え、眼鏡は外してコンタクトを入れる。出来は美久を呼んで確認する。これが、ここで働くにあたって美久の母さんが俺に持ち出した条件だった。
「セイくん、整えれば結構なイケメンだと思うんだけど..........ほら、いい顔してるじゃない。美久も見てごらんなさいよ」
「!!!!!セイが.........イケ......てる......」
「イイわね、よし決めたわ!セイくんにはカウンターに入ってもらいます!そして今みたいな感じにしてお手伝いをやってもらいます!一応バイトの子もいるから、給料も出すし、まぁバイト(お手伝い)ってことで!」
そんなこんなでカウンターに今俺は立っている。はっきりとした仕事は、注文の受付、会計、お客さんからの質問を聞くこと、そして男ということで豆とか食材を運ぶくらいだ。
俺は結構この仕事を気に入っている。
受付も最初慣れずに美久から高笑いされてイラついていたが今では完璧だ。
会計も最初カタツムリより遅かったが、今ではスーパーの人並みに早くなった。
それにお客さんの笑顔は見ていて気持ち良い。
カランカラン
「いらっしゃいませー!」
「ここ.....が噂の人がいるっていう.......」
俺は普段よりはるかに大きい声を出しながら笑顔でお客さんを迎える。
入ってきた人は制服を着た女の子、店内を見回しているところからして初めての入店のようだ。
この店は駅前にあるせいか多くの人が入店する。SNSを美久母が担当しているらしいので若い年齢層の人にも人気らしい。
特にコーヒーに対してこだわりをもっているのでそれ目当てでやってくる人が大半だ。わざわざコーヒーだけ飲んで行く人もいる。
だから俺もコーヒーについてみっちりしごかれた。その結果、まぁまぁ美味いコーヒーを入れることができるようになった訳なんだけど、まだ全然、美久達よりは下手だ。
そんなこんなで受付についているけど俺も悩みがある。
それはカウンター立ってると刺さる視線だ。
なんか上から下までジロジロ見られることが増えたし、結構若い人多いから恥ずかしいんだよな普通に。最近の女子高生ってコーヒー好きなんかな?結構見るけど。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ひゃあ.......は、はい」
目を合わせるとよく目をそらす人が多い。何なんだ全く、俺も顔が引きつっちゃうぞ?
「え、えっと、このコーヒーを一つと........」
メニューを見て何やら悩んでいる。時間帯的にデザートだろうか?ならば
「お客様、お困りのようでしたら当店自慢のコーヒーケーキはいかがでしょうか?コーヒーもしくはお茶と一緒に食べることを想定して作っておりますので無難な選択肢かと思います」
「じゃ、じゃあそれでお願いします」
「かしこまりました。でき次第お持ちいたしますね」
「あ、えっと、その.......」
「まだ何かご要望がございますか?」
「あの.....できればコーヒーは店員さんに入れてもらいたいなぁって」
「左様ですか。かしこまりました。しばし、お待ちください」
俺はこのお願いをされることが最近増えていた。多分どっかで俺が淹れたやつ飲んだ人が広めたんだろうけど、需要がわからん。はっきり言うと美久の母さんのほうが俺の10倍は美味いぞ。(ちょっと盛ったけど)それくらいの腕なのに、物好きが多いんだよな。まぁ人によって苦味とか色々変わるらしいし、俺のやつが好みの人もいるんかな。あと練習と違って緊張感あるし腕は上がってる気もするし。
俺はカウンター横に備えられたコーヒー器具が置いてあるスペースまで行き、慣れた手付きで温められた容器、器具を取り出しフィルターを取り付け粉を蒸らしていく、この時点で結構味変わるので注意したい。そして少しずつお湯を注いでいく。前まではここで毎回ダメ出し食らっていたが、今はもう大丈夫だ。やっぱりなんか後ろから視線感じるがコーヒーのためにスルーしておく。
そして慎重にカップへコーヒーを注ぎ込む。
用意しておいたコーヒーケーキを取り出し、しっかりと見栄えを意識して洋皿に置いていく。
コーヒーケーキ、コースター、カップとナプキン、フォークを置く。
「お待たせいたしました。こちら、コーヒーとコーヒーケーキでございます。砂糖、シロップはどうされますか?」
「あ、えっと多めで」
「かしこまりました」
俺はガムシロップと砂糖を取って洋皿に付けた。
「どうぞ、お持ちくださいませ」
ここでニコッと笑う。笑顔はあっさりしたほうが後味が良いのだ。
「は、はい、ありがとうございます///」
「コーヒーはお早めにお飲みください」
「は、はい。ごちそうさまでした///」
そう言って彼女は席に向かっていった。
変わった子だな、まだ受け取っただけじゃん。
ジロリ........
そして調理場前から感じる美久の視線が俺を貫いていた。
いやほんとコッチ見て睨むのホントやめて?まじで何もしてないじゃん
俺が視線で訴えると、美久は踵を返して調理場へ戻っていった。
カランカラン
しばらくしてまた鈴が店内に鳴り響く
目の前には高校生の女の子、ただつい最近見たことがある人だった。
「注文しても良いでしょうか?店員さん?」
「は..........はいかしこまりました」
透き通るような黒髪
可愛らしさと綺麗さを両立し
校外でも圧倒的なオーラを放つ彼女は
『黒の女神』こと中世愛梨その人だった。
中瀬さんがここに来るのは始めてではない。結構前からよくここを通うようになった。
間違いなく気のせいだと思うが俺のシフトとだいたい来店する日が重なっている気がする。
まぁ間違いなく気のせいだが最近シフト増やしてから来店する日が増えた気がする
そんな今の俺のシフトで彼女と会うのはだいたい週4回くらい
4回...........4回!??
中瀬さんここ来るの多くない!!??
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