第26話 二日目の予定
朝食後。
再びハナコにダイブしてもふもふ二度寝……するほど睡眠時間が足りていないわけでもなかったので、ソフィアは活動する事にした。
とはいえ特に何も言いつけられているわけでもないので、これといってする事はない。
今まで何かしら仕事を投げつけられあくせく働いていたため、自分の時間を考える余地など無かった。
いざ手に入れた自由だが、想像よりも自分の中に『これをしたい!』というものが無くて愕然とする。
なんて事を考えていると、クラリスが「今日のご予定ですが」と口を開いた。
「午後の三時から裏庭にて、アラン様と精霊魔法の訓練をしていただきたく存じます」
「訓練!」
一転、水を得た魚のように目を輝かせるソフィア
「訓練と聞いて嬉しそうにする人は初めて見ました」
「一度もやった事なかったから、ちょっとした憧れがあったの」
祖国であるフェルミでは、魔力量のテストを終えた後は基本的に魔法学校に入学することが義務付けられる。
それぞれの魔力量に合わせて分けられたクラスで日夜、一人前の魔法師になるべく座学や実践的な訓練をするのだ。
妹のマリンも学校でよく家を開けがちだった事を覚えている。
一方のソフィアは魔力量がゼロだから、魔法学校に入学する必要は無しと不名誉な判断をくだされ、実家に幽閉される運びとなった。
普通なら学舎に通い、同世代の子達と一緒に厳しくも楽しい青春時代を送るはずが家で奴隷のような日々を送る羽目になったため、訓練と聞いてつい嬉しくなったのである。
「ちなみに、訓練までの時間は?」
「昼食が十三時に。それ以外は特に予定はございません」
「なるほど……」
昼食までの五時間が暇なことが確定してしまったが、何かしら予定が出来たため気分的には少し楽になった。
「じゃあ、昼食までもう一眠りしようかしら」
「食べてすぐ寝るのは太りますよ」
「やっぱり起きておくわ」
「いえ、ソフィア様はもっと太るべきです……が、食べてすぐ寝るのはあまり身体にはよろしくないので、起きておく事をお勧めいたします」
「うっ……そう言われると二度寝はまたの機会にしたほうがよさそうね」
ソフィアがちょっぴり残念そうにため息をつくと、クラリスは言った。
「お昼まで退屈しておられるのでしたら、せっかくですし屋敷内を案内いたしましょうか?」
「え、行きたい! 屋敷の中を大冒険!」
「そんな大層なものではないですが」
というわけで、クラリスの案内で屋敷内を散策する事になった。
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