第10話 3−5


 一方同じ頃。

 マアス城の新型ゴーレムちゃん制御システムが設置されている部屋で、マアス城の工場所属のゴーレムちゃん、ネコ耳に青の長い髪の毛で、ぶかぶかの作業着を着たメフィールちゃんは制御システムを運転させながら調査していました。

 事前調査でとりあえず安心そうだという事はわかっていたのですが、それでも誰が作ったのかわからないものですから、念入りに調査するに越した事はないのです。

「ふーみゅ。脳をヘルメットのインターフェースでゴーレムに直接接続し、操作を行い、脳にゴーレムが見聞きした画像や音声などを送り込むとにゃ……。ここまではわかるんにゃが……」

 モニタリングシステムなどを眺めながらメフィールちゃんは首をひねっていました。

 操作の仕方はわかるのですが、どのように制御しているのかが、気になるのです。

(おかしいにゃ。何かがおかしいにゃ。このシステム、これだけの機能ではない気がするにゃ。一体何がにゃ……。んにゃ?)

 メフィールちゃんは腕組みをしながらあれこれ考えていましたが。

 ふとそこで、彼女はベンジさんが出かける前に言っていた事を思い出しました。

 彼がヘルメットを被った後で言った事です。

(ヘルメットの中にあるたくさんの針のような物で刺されたような気がする)

 と。

 そこでメフィールちゃんは、ベンジさんが被っているヘルメットに注目しました。

「……これは、ヘルメットを調べた方が良さそうですにゃ」

 そう呟くと、メフィールちゃんは呪文を唱え始めました。

 物体をスキャンし、調べる一種の鑑定魔法です。

 ヘルメットを幾つかの魔法陣が取り囲み、メフィールちゃんの目の前に表示窓が現れます。

 しばらく魔法陣がぐるぐると回転していましたが。やがて止まります。

 そして、スキャンの結果が表示窓に現れました。

 メフィールちゃんは表示窓に表示された分析結果を見た瞬間。

「なんて事だにゃ……!」

 と息を呑みました。

 そして、ベンジさんが座っているシステムの全体を見て、それからもう一度ヘルメットを凝視しました。

 その、表示窓に映し出された鑑定結果とは。

 実はこのヘルメットの内側には、ごくごく小さな見えない針が無数に付いていて、それが被ると針が頭皮や頭蓋骨を通って脳内に深く突き刺さり、脳内にマナマシンと呼ばれる魔力の粒を機械化した微小機械を送り込む仕掛けになっていたのです。

 そのマナマシンは脳の神経などに付着し、時間をかけて脳内を作り変える、そういう仕組みになっていたのです。

「この新型ゴーレム制御システムは実は制御システムだけではにゃく……、制御システムを使っている人の脳などを作り変える恐ろしいシステムだったんだにゃ!」

 メフィールちゃんの背中に冷たいものが一筋走りました。

 その「感覚」はゴーレムちゃんとしては普通、ありえないものでした。

 しかし、それを感じさせる程、事は重大でした。

 戦慄、とはまさにこの事です。

 彼女は慌てて制御システムの表示窓を開きました。

 そして、制御システム停止ボタンを探そうとしましたが。

 ありません。

 どのメニューを見ても、どこを探しても制御システムを停止させるボタンやメニューなどが見当たらないのです。

「なんて事だにゃ……! システムが停止できなくなっているにゃ……!」

 何者かに、罠にはめられた。

 ベンジ様が、人質にされた。

 その事実が、メフィールちゃんに深くのしかかります。

 一体何のためにこんな事をしたのかは分かりませんが、とにかく、一大事である事は確かです。

 メフィールちゃんはしばらく思案顔で両耳をビクビク動かしながらあちらこちら見回したあと。

「これは一大事だにゃ……! ベンジ様とマル様にお伝えしなければにゃ……!」

 そう叫ぶようにつぶやくと、メイド長を探しに、駆け出しました──。


                                      十五%


 さてさて、いよいよ気が付きましたね。

 これからが本番の第一段階です。


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