第3話

   

 ますます信じられない発言だった。

 私も含めて友人たちは、困惑して顔を見合わせる。

 中野の生活水準から考えて、このレベルの食材を『毎日のように』買えるはずがなかった。

 かりに宝くじや競馬で泡銭あぶくぜにを手にしたのだとしても、それは一時的な話だ。こんな散財が習慣になったら、遠からぬうちに破産してしまうだろう。

 友人たちも似たような考えが頭に浮かんだとみえて、みんな心配そうな表情になっている。

 対照的に、当の中野は、そんな私たちの様子を面白がっていた。

「安心しろ。もう食費を心配する必要はないんだ。なにしろ、俺にはあれがあるからな!」

 そう言って中野は、キッチンスペースに鎮座する冷蔵庫を指し示した。

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る