第18話 最高でもあり最低でもある夜飯
「~~ポロロン♪」
陽気な音楽が次第に聞こえ始め、気づけば大音量でスマホのアラームがなっていた。
結局俺は、竹下通り散策後はどこにも行かずに家に帰って来た。
そこから少し昼寝をしようと思い、瞳を閉じたのだが。
気づけば18時、いつかけたのか分からないアラームに起こされたってわけか。
アラームを止めて立ち上がり、背伸びをして体を伸ばす。
肩がこっていると感じ、俺は首を折り曲げてボキボキと音を鳴らす。
首の骨を鳴らすのは間接にある気泡が弾けた時の音で、これはかなり危ない行為。
首の血管が伸びて切れたり、血栓が出来たりする。
自分でも分かっているんだが、これをすると少しだけ肩が楽になる。
花園電機で残業していた時、こればかりをしていたからまだ癖が抜けないのだろう。
今でも時々してしまう悪い癖だ。
しかし、かなり寝たな。
帰って来たのは12時前、そして今が18時。
昼寝のつもりが6時間も寝るとは、よっぽど疲れていたのか。
畳の上だからいつもは寝れても2時間程。
坂本代表との面会時のプレッシャーでどっと疲れが来たのだろう。
お腹がグルグルと鳴る。
そういえば、昼に食べたのはクレープだけだったな。
ちょうど夕飯時だし、なんなら夜は酒で気持ち良く一杯やろうと思っていた。
俺はスーツについたほこりを払い、ジャケットを羽織った後、またアパートを出た。
~~~
花園電機に勤めていた時に良く通っていた店にでも行こうかと思いながら階段を降りる。
ちょうどここから一つ隣の駅に行けばよいため交通費もそんなにかからない。
思い出しただけであそこのサバの味噌煮を食いたくなってきた。
俺は駅まで走り、少し駆け足気味で電車に乗り込んだ。
山手線に乗り、2分ほどで一つ隣の巣鴨駅に着いた。
人でごった返すホーム、俺は人とぶつからないように避けながら歩き、南口から外に出た。
空が茜色になり、太陽が雲で半分隠れ、半分地平線に沈んでいたのでとても幻想的な景色になっている。
500mほど歩き南口付近にある、居酒屋『酒原』についた。
青と白を基調としたのれんが出ていて「酒原」という二文字がでかでか印刷されている。
酒原の隣には少し洒落た喫茶店があり、通勤時はいつもここでコーヒーを買ってから花園電機に行っていた。
あの頃を思い出しながら、俺は酒原の扉を開ける。
「いらっしゃいませ~!」
野太い男性の声で歓迎の挨拶をされる。
俺は5人程座れるカウンター席に向かい、一番端の席に座った。
この席は大将が寿司を握ったり、調理をする光景がハッキリと見える席で、いつもこの席が空いていたらここに座るようにしている。
俺はちょうど後ろを歩いていた店員さんを止めて料理を頼む。
「サバの味噌煮とえんがわ、あと生ビールと枝豆を」
店員さんは俺の注文をメモして「かしこまりました、少々お待ちください!」と言い、軽く頭を下げて正面にある厨房に入って行った。
やはりここは士気が高いのか、いつも店員さんが活気づいている。
それだけ店の業務体制が良いのか分からないが、職種が変わってしまうが俺もこのような場所で働きたかった。
少し羨みつつも、周りを見渡す。
店内には定時で上がったらしき若いサラリーマン二人組が楽しそうに談笑している。
だが、聞こえてくるのは仕事に対する愚痴。
「課長、マジで一つのミスにこだわりすぎだよな~!」
「ほんとそれ! 数字一つ違うだけで怒鳴るとかマジやってらんねぇよ!」
少し大き目の声、店内にその声が響き渡り、嫌悪の目で見ている人も多数いる。
俺も不快に感じながらも、ここで首を突っ込むのはおかしいと思いなるべく気にしないようにしていた。
「こちら、えんがわです」
店員さんがえんがわを持ってきて、俺の目の前に置いた。
これこれ、このえんがわが食べたかったんだ。
二貫で290円と少しお高めだが、ここのえんがわは鮮度が良く、しっかりと血抜きがされていて臭みも無い。
ヒラメ本来のうま味だけを味わう事が出来て、疲れた時は両方魚になってしまうが、サバの味噌煮とこれを一緒に食べていた。
一貫は何も漬けずに、もう一貫は醤油とワサビを付け、その後にビールを飲む。
これが酒原に来た時の最高のルーティンだ。
最近奈菜美の件でドタバタしていたから、こうやって落ち着いて何かをするのは久々だ。
えんがわを一貫食べ、えんがわを味わっているとサバの味噌煮と生ビール、えだまめが立て続けに運ばれてきた。
俺は誰にも聞こえないように歓喜の声を上げ、ビールを飲もうとした時だった。
「ガチうめ~~!」
さっき話題に出した若いサラリーマンが大声を出した。
注目が一気に集まる。
流石に声が大きすぎたためか店員さんが注意をする。
だが、酔っているのか全く話になっていない。
店員さんはそれでも注意を続けるが、今度は逆にサラリーマンが逆上して店員さんに詰め掛かっている。
ここで流石の俺も、イライラが爆発して止めに入ろうと思ったが奈菜美の事を思い出して我に返った。
俺は坂本代表を助けて感謝され、絶賛今求婚されている身。
そして今詰め寄られている店員さんも大学生らしき女性、ここでもし助けてしまえば求婚はともかく、連絡先を聞かれ、その後交流をしなければならないという可能性もゼロではない。
前例がある以上、俺は迂闊に動くことは出来なかった。
俺が助けようか迷っていた所で「ちょっと、あんた達なにやってるの」と誰かがサラリーマンに話しかた。
顔を上げ、声の方に目を移してみると、そこには見覚えのある女性が居た。
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始めまして、竜田優乃と申します。
まずは私の小説を読んでくださる皆様に感謝を、ありがとうございます。
いつも投稿前にチェックはしているのですが、誤字脱字が酷いですね。
報告本当に感謝しています、ありがとうございます。
今回は誤字脱字についての感謝ということで少し書かせていただきました。
沢山の方に読んでもらえてうれしいですが、逆に誤字脱字の件で不安が凄いです。
もし不快感を覚えるような文でしたら、本当にごめんなさい。
これからも頑張ります。
あと、私はパソコンで投稿しています。
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