本と猫とミルクティー

@uminomori

第1話

スーパーマーケット


最近、開店と同時にスーパーに入店するようになった。

仕事が変わったからだ。

以前はだいたい15時に仕事を終えて

帰りにスーパーに寄って帰るのが日課だったが、3月からは夜勤中心の生活となったため

夜勤明けでそのままスーパーに寄るようになった。

時間帯が違えば客層も違う。朝の買い物客は夕方に比べ明らかに年齢層が高い。そのせいもあるのか、ご丁寧に入り口で従業員が「いらっしゃいませ〜」と言いながら一人一人の客に買い物かごを手渡してくれてたりする。おお、朝はこんなサービスがあるのかと思いつつ、私は買い物かごが3つは必要なため、「あ、もう一つ」とかいう面倒なやり取りを避けるため、従業員が顔見知りのお客さんとあいさつを交わしている隙に、ささっとカートにかごを3つセットしてスーパー内へと進入した。


入ってすぐは野菜コーナーだ。新鮮な野菜がこんもりと積まれている。朝どれきゅうり3本で198円みたいな商品も、袋に詰める時に他の人が選り好んで触った心配がないから安心だ。次にレンコンを買おうかと値踏みしていると、隣のカボチャの前で年配のご婦人が「これとこれって何が違うのかしら?」と首をひねる。連れがいるようでもないし、近くに店員さんもいない。明らかに一番近くにいるのは私なので、「こっちが国産でこっちが外国産ですよ」と値段の違いについて説明すると「なるほどねぇ」と納得はしたものの、買うか買わないか悩んでおられたため私はその場を後にした。


また別の日は、和菓子売り場で柏餅を2パック

かごに入れ、そういえば長男は粒あんが苦手だったなと思い至り、長男用にわらび餅をかごに入れると

隣で和菓子を見ながらなにかお話ししていた年配のご夫婦の旦那さんの方から「ありがとね」と声を掛けられた。初めは、奥さんに言ったのかな?とも思ったが明らかにこっちを見ており、そのにこやかな顔に思わずぺこりと頭を下げると、私は頭にハテナを浮かべたまま流動的にパン売り場へと流れて行った。

今のはいったいなんのありがとうだろう??もしかして、私が買ったわらび餅の製造者とか?などと想像を頭に巡らす。現に柏餅にはパック裏のシールに名古屋の人気和菓子店のものと記してあるが、わらび餅は地元の製造元だった。じゃああのご夫婦は市内で和菓子店を営んでいて、今日は自分のとこの商品を置いてもらっているスーパーに買い物に来ていたのだろうか。奥さんは買い物かごを下げていたから買い物なのは間違いないはずだ。そして、なんとなく自分のところの商品の売れ行きが気になっていると、私が柏餅を選んでかごに入れた。「あーやっぱりそっちを選ぶか」とくやしく思っていた矢先、自慢のわらび餅も迷わずかごに入れてくれるのを見て、嬉しくなって思わずお礼を言わずにはいられなかった、、とか?そんなふうに考えるとさっきの"ありがとう"とご主人の嬉しそうな表情も腑に落ちるし、少しハッピーだ。

と、ここまで読んでおわかりだと思うが、なぜか朝買い物に来ている年配層の方々は容易に他人に話しかける人が多いのだ。しかもほんとに自然になんの気負いも垣根もなく話しかける。これは買い物時間が夕方から朝に変わって、私が一番びっくりしたことだった。私は基本一週間分の食材を買いだめするため週一回しか買い物に行かない。だから、朝のスーパーにはまだ8回ほどしか行っていないのだが、にも関わらず8回中4回は同じような調子で知らない人から話しかけられている。でも悪い気はしない。店内を歩いていると店員さんと常連客の会話も多く聞こえてくる。「病院通ってるの?無理しないでね」「髪の毛増えたわね。若返ったじゃない」なんだか夕方に比べてほのぼのとしているのだ。そのうち、私も顔を覚えられて店員や常連客とあいさつを交わすようになる日も近いかもしれない。




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