第40話 和!お茶!景色!!?みたいな感じですわ

車から降りて見えた景色は想像とは少し違い、かなり落ち着きと趣のある場所だった。凉坂さんの落ち着いているという言葉を信用していなかったわけではなかったが、想像していた洋風の落ち着き方でなく、日本古来といった感じの和風の落ち着き方をしていたのだ。

というのも、目の前に佇んでいる建物は和を体現したような、良くも悪くも少し古めの物だった。それにしても何の建物なのだろうか。


「では、行ってらっしゃいませ、また向かいにまいります」

和の屋敷に見とれていると、後ろから美月の声がした。彼女は車を発射させ何処かへ立ち去る。

周りを見渡すと、そこには屋敷と木々しかなかった。いや、正確には200m先位に何か壁が辛うじて見る。田舎というには家から近すぎるその場所はかなり不思議な雰囲気を纏っていた。


「ここって、どこまでが私有地?」

「たぶん、ここらへん1ヘクタールを二回り位大きくした感じですわ!」

「1ヘクタールってどのくらいだっけ?」

「100m×100mのマスですのよ!」

ヘクタールなんて単位を使われたのはいつ振りだろうか、大きすぎてイメージが難しいがとにかく私有地に使ってはいけない単位だという事だけは分かる。


「とりあえず、建物に入りますのよ! 啓さん付いてきてくださいですわ!」

細く柔らかい少女に手を引かれる。これが帰り道や学校内だったら間違いなく青春の一ページに刻まれていただろう。

でも今はそんな考えはなく、今からどこに行くのだろうと言う期待と緊張が入り混じった新学期にクラス発表を待っているような気持ちだ。


お嬢様がゆっくりと戸を引いた。

てっきり使用人の方々の「いらっしゃいませ」という声が聞こえてくるかと思いきや、彼女はそのまま僕の手を引いて、中に入っていく。


「ここで、靴を脱いでくださる?」

言われた通りに靴を脱ぎ、綺麗なフローリングの廊下を彼女に連れられて歩く。小さい学校のような大きさをしたその家は未だに何のための場所なのかよくわからない。


「ねぇ、ここって何をする場所なの?」

「説明がなかなか難しいですわ、とにかくわたくしの大切な場所ですの!」

いつもより落ち着いたトーンでそんな事を言われる。本当にここはどんな場所なんだろうか。


「啓さんはお茶って好きですの?」

「好きと言えば好きだけど、何か特別こだわりがあるとか詳しいわけじゃないかな」

「なら、良かったですわ」

それを聞いた彼女は、ちょうどいま歩いている右側の襖をあけた。

旅行先の和室のような座椅子のついた小奇麗な部屋がそこにはあった。

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