第38話 遅刻してしまいます。いいんですか? 目覚ましお嬢様です
「啓様、起きてください。遅刻してしまいます」
低く柔らかい声が僕の体を目覚めへと導いていく。
メイド服を着た少女に体を軽く叩かれ続ける。夢だとすぐにわかったので、気にしないことにした。夢だからぺちぺちと手でたたかれても全く痛くない。
「啓様、起きてください、起きてください。このままではどうなっても知りませんよ?」
夢の住人はこちらを脅すようにそんな事をいう。夢だから何されても痛くないに決まっているだろ。
そんな風にメイドを頭の中で小馬鹿にしていると、どこかへ立ち去ってしまった、じゃあここから平和な夢が始めるのかと、ベッドの上でうとうととしていると、「ドンドン」と元気すぎる足音が聞こえて来た。
「失礼します。中々起きてもらえ内容でしたのでお嬢様をお連れしました。彩様、啓様がお目覚めになられる一撃をどうぞ与えてあげてください」
「でも、美月、啓さんこんなに気持ちよく寝ていらっしゃりますわ、起こすなんてかわいそうじゃありませんの?」
「ですが、それでは約束に遅刻してしまいますよ? 行きたがっていた啓様のためにも起こして差し上げるのは賢明かと」
「じゃあ仕方がありませんわね、行きますわよ!」
メイドの声ともう一つより気品のある声が聞こえる。 お嬢様? 一撃? 彩様? このわざとらしいお嬢様口調? 頭がさえわたって来た。そこで事の重大さを寝ぼけながらも理解した、これは夢じゃない。
ベッドから飛び起きて回避鼓動を取る。いきなり飛び降りたからか、ベッドの縁に足をぶつけてしまったが、くらってしまったかもしれない攻撃に比べたらこのくらい安い物だ。
「起きた、起きたから」
「おはようございます啓様」
「あら、おはようございます啓さん!」
「お、おはよう、それにしても二人とも朝早いね」
時計を見てもまだ八時前、休日だからか僕の体はまだ睡眠を欲しているようだ。
「私は使用人ですので、いつもこのくらいの時間に出勤させていただいてます」
「わたくしも昔本で健康は早起きにいいとお聞きしてから、この時間には起きていますわ!」
体力が少ない僕に比べて、二人はとても元気な様子だ。そんな二人の様子をみてこの生活が本当に夢じゃなかったことを理解する。
「啓様、雑談している場合ではございません、お嬢様のお気に入りの場所に遅れてしまいます」
美月がこちらを急かしてくる、昨日直前に予約を入れたからか早い時間からでしか予約が取れなかったんだろうか。
「じゃあ適当に着替えてから下に行くから待っててよ」
「いえ、適当でなく、啓様は昨晩彩様と遊びに行かれる事が決まってから必死にクローゼットをひっくり返してコーディネートしたものに着替えてきてください」
いつの間に見られたんだ、ストーカーに恥ずかしいことをばらされるも眠いからかそこまでの衝撃はなかった。
可愛い女性と遊びに行くのにそわそわしない男なんていないだろ!!!
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