侵略するお嬢様!!!

仙次

第1話 お嬢様襲来

「ここが常世さんの御宅でしょうか?」

家中に鳴り響いた、チャイムに対応しようとモニターを付ける。

そこには画質の悪いモニター越しでも分かるほど飛び切りの美少女が家の前に立っていた。


「はい、そうです」

家族のだれの知り合いだろうか。見た目だけなら僕と同い年位に見えるが、僕はこんな美人知らない。



「もしかして、あなたは啓さんですの?」

「あー、はいそうです」

この人と知り合いの家族の誰かが僕の事を話したんだろうか、名前を呼ばれたことへの動揺で少し返事が遅くなってしまう。


「やっぱり!覚えていますの?私ですわ!私!」

「ごめんなさい、あんまり記憶力がいい方じゃなくって」


彼女は本当に誰なのだろうか、僕はこんな人知らない。

記憶力が用無いのは本当だが、ここまでの美人の知り合いだたら簡単に忘れられるはずがない。

もしかしたら兄貴の友達の人だろうか?かなり昔に会った事のある人で、そこまで関わりの無い人だったら忘れていても不思議ではなくなる。


そんな事を考えていると、スピーカー越しのごわごわとした「あのー良かったら、顔を見せてもらえませんか?」という音が聞こえてきた。


「あー、ごめんなさい、ちょっと待っててください」

僕は直ぐにそう言い、玄関の方へと向かった。

知らない相手と顔を合わせるのは少し怖いが、インターホン越しで見た可憐な少女ならば何かあっても僕が対処することが可能だろう。


そんな甘い考えを持ったせいで僕はまんまとドアを開けた。


「本当に啓さんですわ!」

まだドアが全部開ききっていない中、少女は僕の姿が見えた途端こちらに抱き着くような格好で全力で飛び込んでくる。


僕は反射的にドアを閉じた。

恐怖というよりも困惑という感情が強くなり過ぎた結果、彼女と対面した瞬間扉を閉めたのだ。


「失礼ですが、どちら様ですか?」

抱き着かれそうになったことの恐動揺が隠し切れず、ドアを閉じたまま彼女を質問を投げかける。


「私は凉坂って言いますわ、啓さんに危ない所を助けられたものですの」

少女はさっきまでの嬉しそうなテンションでなく、小動物をおびき出すかのようなおっとりした感じで、名乗り始める。

きっとこれは新手の詐欺か美人局だ。喋り方は可笑しいが、いくらこんなに儚げで美しい少女だからと言って簡単にドアを開けて抱き着かれてしまったら、何をされてしまうか分からない。


まず第一これだけ美しい少女が僕の事を知っているはずがない、それにいくら知り合いだったとは言え急に抱き着くなんて不自然極まりない。

きっとこれから怖い男たちが家に乗り込んできて、僕は死ぬまでブラックどころじゃない環境で働かされてしまうんだ。


「啓さん開けてくださらないんですか?」

「いやーちょっと、急に建付けが悪くなったみたいで」

我ながら苦しすぎる言い訳だ。だが簡単にこちらが相手の嘘に気が付いたことを悟られるわけには行かない。

もしこっちが何か気が付いたのがバレれば、それこそ力ずくでどうにかされてしまうかもしれないからだ。


「まあ!それは大変ですね、じゃあ開けるのに協力して差し上げますわ」

本気で驚いたような声がする。

その直後ドアが映画館でも聞いたこともないような「ガッシャーン!!」という大きな破裂音が鳴った。


「これで、解決ですわね!」

そう言いながら綺麗な黒髪をしたお嬢様口調の美しい女は僕に飛び掛かるように抱き着いてきた。

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