マネージャー
「まあまあ、あんまり悲観になりすぎるのもよくないさ。脱出できたら歩いて町まで行けばいい」
「そ、そうだよな」
「歩いて町まで……っていうのも億劫ですね」
そう言うな
ゾンビがうろつくキャンプ場より数時間でも歩いて町に行ける方が幸せだろ。
まあ、最初にやるのは電波が入ってすぐに救急車を呼ぶことだけどな。
感染してるかもしれないし。
……噛まれなければ感染しないっぽいけどな、ゲームの設定上。
しかし念には念を。
なんて思っていた時期が俺にもありました。
この時はまだ、このアホの攻略対象には理性があるものだと思っていたのだ。
***
ふぁー、やはりベッドで寝ると疲労が格段に違う。
しかしやはりそろそろ風呂に入りたい。
コテージエリアの水道は完全に止められており、キッチンも風呂も水は出ない。
今日も今日とて炊事場の水道で飲み水を確保する必要があるだろう。
昨日話し合ったし、危険はあるだろうが俺と
各自、役目を果たすべく出かけていったわけだが、正直こんなに上手くいくとは思っていなかった。
駐車場に近づくと、見たことはないのに見たことがある車が停まっていたのだ。
そう、
「大沢さん!」
「
フェンスに駆け寄る俺の隣に、コスプレでも見ないような格好の女の子がいることに気がついたマネージャー、大沢が駆け寄るのを躊躇して立ち止まる。
まだ朝早いはずなのに、もう来てくれているのには本当に驚いた。
何時に出てきたんだよ。
意外と愛されてるな、
「あ、あの、
「ちょっと待ってくれ、大沢。このフェンス、高圧電流が流れてるみたいだから、そのままそこで待機してくれ」
「え! そ、そうだったんですか? ワッ! 本当だ、高圧電流注意って看板に書いてある……って、そうじゃなくて!
「俺も説明に困るんだが……とにかく聞いてほしい」
説明は俺に任せてほしい、と事前に
マネージャーは「まさかぁ」という表情だつたが、高圧電流の流れるフェンスと、多分そう言うと思って事前に
ゾンビは生きているし——ゾンビを生きているって言っていいのかわからんけど——その様子が明らかに常人ではないとわかると言葉を失って後ずさった。
なにより、
「……に、にわかには信じ難いです」
「俺もだ。でも、とにかくそういうことなんだよ。俺たちだって夢なら覚めてくれって思いながらこの地獄みたいな二日間過ごしたんだ」
「っ」
「信じられなくても構わないが、このままじゃ俺たちはこのキャンプ場から出られない。この
「わ、かりました。とにかく一度社長に連絡を入れて、近くの町の警察署に相談してきます」
「ああ。よろしく頼む。……明らかに普通じゃないから、帰る時も気をつけてくれよ」
「は、はい」
大沢は頼りなさそうな男だが、記憶の中の
信頼に足る男だと思うからこそ、真摯に頼む。
しかし、さすがに普段の
「普段の
「彼女みたいな子どもが戦ってるのに、なにもできないんだぜ? 一周回って冷静にもなるっつーの」
「な、なるほど。そういうものなのかましれませんね。わかりました。では、食材も買ってきますから。夕方には戻って来れるように頑張ります」
「無理はしないでくれ。お前になにかあったら希望が絶たれる」
「ハハハ。……はい」
少し笑って緊張を解いた大沢は車に戻って社長に連絡を入れる。
しかし、駐車場も電話が繋がらないらしくて一度車の中から戻ってきた。
俺は頷いて、大沢をキャンプ場から離れるように促す。
とにかく、外と連絡を取りたいのだ。
不安そうにしながらキャンプ場を去っていく大沢を見送り、あとはただただ祈るしかない。
「大沢さんは、外と連絡を取ってきてくれるでしょうか……」
「わからないけど、あとはもう祈るしかないよな。とりあえずアスレチックエリアに行って
「は、はい。そうですね。お二人とも、無理をしてないといいんですが」
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