コテージエリアボス戦(1)
それにしても、まさか
ゲームではグイグイ使えない男どもを引っ張っていくタイプだったのに。
「なんにしても、まずは飯だよ、飯! 炊事場に行こう!」
「炊事場って、食材置いてあるんだっけ?」
「さ、さあ?」
「僕も使ったことありません」
俺のイメージだと、食材を持ち込んで料理する共有の場所、のような気がするんだけど……。
食材が売ってたりもするのかな?
まあ、誰かが持ち込んだ食糧が残ってたりするかもしれないし、希望は捨てずに行ってみるのはありか。
でもその前にコテージエリアのボス戦なんだよ。
「お風呂にも入りたいですよね」
「「「あ〜〜〜〜」」」
文明的な生活に一刻も早く戻りたいものである。
その前に生き延びなければならないけれど。
「では、まずは私が周りの安全を確認してきます。大丈夫だったら、声をかけますので」
「よ、よろしくお願いします!
「頼んだぜ!」
「建物が多いから、できるだけ道路の真ん中を歩くといいぞ」
「あ、は、はい! なるほど! わかりました、
すっごーく申し訳ないなー、と思いながら言ったアドバイスに、
俺もいよいよダメな大人だな。
それなのに胸キュンはねぇわ。
まずい。これはまずい。
シンプルに自分自身を嫌いになりそうだ。
「ぐぅ、腹減ったな……」
「そうですね。もうなんでもいいから食べたいです……。今ゾンビを見たらゾンビも美味しそうに見えそうで……」
「ゾンビは食う前に食われるだろ……」
ああ、俺よりダメな大人が他にもいるって思うと安心するなぁ。
下には下がいるってことで。
「え! なんの音ですか?」
「もう
は?
やはりテメェが底辺か?
だが、確かにいきなり表が騒がしくなり始めた。
表が見えるダイニングへ降りて、覗き込む。
半透明な怪物が、無数の触手を伸ばしながら
ゲームでも思ったが、マジ狙いづれぇ!
「な、なんですか、あれ!」
「イソギンチャクの化け物かぁ!?」
イソギンチャク。
あれのモデルは多分イソギンチャク。
サボテンのような細かい針が触手の先端についており、触れると一定時間麻痺してしまう厄介な敵なのだ。
昨夜
しかし本体は非常にすっとろく、夜目が利かないため暗い場所に入ると見つけづらくなる。
なので——。
「
「え! た、
「
「「っ」」
俺には戦う術こそないが、ゲームの知識はあるのだ。
コテージエリアのコテージは八つ。
その中で、俺たちが泊まったのは一番南の端のコテージ。
そして、このエリアボスを倒すための秘策は——北の二つ目にあった、ような気がする。
あいにく何年も前のゲーム知識なので、細部は記憶が怪しい。
玄関からこっそりと出て、隙を見てき北の番目のコテージへ移動する。
やはり、玄関の鍵が開いている。
ビンゴ! ここだ!
「
「
「こっちに誘導して! 北側のコテージは陽があまり差さない!」
「っ、は、はい!」
よく見れば
「大丈夫?」
「は、はい。少し足が痺れているだけです……」
いやいや、本当、普通の人間が食らえば
……もちろん言わないけれど。
「腕を貸して」
「あ……」
金属のようなパワードアームが重い。
けど、そのまま横抱きにして二階に上がった。
構造は昨日のコテージと同じだが、一人部屋の片方に縦長い金属ケースを見つける。
やはり、あった。
「こ、これ! このカバン……! あのビルにあったものと同じものです!」
「あのビルにあったって、その腕の……?」
「はい! もしかして、同じものが入っているんでしょうか……」
俺から腕を外し、
そこに入っていたのは、パワードスーツのレック部分。
「これ、もしかして」
「つけるの?」
「つけます」
デザインも、色も、腕のパワードスーツのパーツにそっくりだ。
迷わずに、そのパーツへ足を突っ込む。
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