第4話

   

 部屋を出たものの、行き先の当ては全くなかった。さまよい歩くだけだ。

 駅前には交番もあるから、そちらへ行けば自首も可能だが、どうしても足が向かなかった。警察に出頭するほどの勇気を、私は持ち合わせていなかったようだ。

 反対側の住宅街を一時間くらい無駄にウロウロする間に、少しは冷静になってきて……。

 結局、部屋へ戻ることにした。

「ドラマや小説でも、犯人は犯行現場に戻る、って話があるし。それと同じかしら」

 自虐的な冗談が口から出るのも、現実逃避の一環なのだろう。

 今は彼の死体が放置されているけれど、それでも、あそこが私の部屋であり、私の居場所なのだ。

 警察のお世話になるにせよ、隠蔽する方向に走るにせよ。どちらにしても部屋へ帰るしかない。

 そう決心したのだが……。

 ドキドキしなから部屋の扉を明けた途端、驚いて腰を抜かしそうになった。

「よう、優子。今日は遅かったな。早くメシ作ってくれよ」

 元気な彼の声に迎えられたのだ!

   

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