第43話 ハッピーエンド

星がこんなに

近くに見える


あの夜二人で見上げた星と

変わらないのに

あの夜二人は

本当に星を見たのかな

記憶は儚くて

遠い日の出来事のように

時間は止まってしまってる


風が

あの人の

傍に寄り添う人がいるみたいと

私の耳元で囁く

ずっと幸せは願っていたから

良かったねと呟くけれど

胸が

なんだかこんなに痛い


儚く壊れた記憶が

元に戻るように

組み立てられて

あの夜が甦る


冷たい風の吹いた夜

あなたのコートの

ポケットに入れた

互いの手を握りしめて

白い息を吐きながら

美しい星を見上げたこと

それはまるで

セピアカラーの動画のように

目の前に映し出され


風は囁く

幸せみたいだよって

その瞬間記憶は

エンディングロールのように

ひとつずつ終わっていく


きっとこれは

ハッピーエンド

幸せ願ったハッピーエンド

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る