バリアント

とわ

第1話 アルとミカ


「じいちゃん、行ってくるよ!」


「おう、気を付けてな」


 玄関の扉を開けて表に出る。そしてギルドに向かって歩き始めた。


 この人物の名はアルと言う。今年で15歳になった黒髪の少年だ。


 この街はラビアンローズと呼ばれる街で、昔おじいさんが移り住んできた街だ。それ程大きくはない街だが、病院などの最低限の施設は揃っている。


 街並みは石造りの建物が多く、若干、緑は少なかった。


「おはよ! アル!」


 突如、背後から両肩に手を掛けられた。


「うわ! 何だ…、ミカか」


 ミカはしてやったりといった顔をしながら、アルの隣に並ぶ。


 このミカと呼ばれる少女は近所の幼馴染で、ショートボブの緑髪をしており、目はクリっとしている。


「どこかへ出掛けるの?」


「昨日言っただろ。冒険者登録に行くんだよ」


「ああー。そういえば、そんなこと言ってたわね」


「おまえこそ、どこへ行くんだよ?」


「昨日言ったでしょ。あんたと同じ冒険者登録に行くのよ」


 アルは分かってはいたが、先程少し驚かされたので、皮肉も込めてあえて聞き返した。


「ついでなんだし、一緒に行きましょ!」


 こうして、アル達は二人で冒険者ギルドへ向かうこととなった。



 ★



「どうしたのよ? 浮かない顔をして~。ひょっとして、まだ悩んでいるの?」


「ん~~~」


 ミカはアルの顔を覗き込むが、アルは腕を組んで唸っていた。


 アルには悩みがあった。それは冒険者として、どういった職業に就くかだ。


「自分の好きな道を選べば良いじゃない? それとも、またおじいちゃんに何か言われたの?」


「まあな。盾使いになれってしつこいんだよ」


 アルのおじいさんは、昔、盾を使っていた。なのでアルにもそれを継がせようとしていた。


「でも、そんなこと言っても、今から授かるスキル適正が盾向きなんて決まってるわけじゃないんだし、何になるかなんてわからないでしょ」


 ミカの話は最もだった。


 この星にはスキル適正と呼ばれるものがある。アルのおじいさんは日本人だったため、このスキル適正を所持していなかったが、この星の住人と結婚を果たし、そして生まれたアルの母親にはスキル適正が芽生えていた。なので、アルにもスキル適正は芽生えることになる。


 だが、このスキル適正と呼ばれるものは、所持をしているからといって使えるものではない。15歳を過ぎた後にギルドで解放の儀式を行い、何を所持しているのかが判明すると、その効果が現れるようになる。そしてスキル適正と相談しながら、自分の冒険者としてのスキルを伸ばすようになる。


 年齢制限が設けられているのは、体に負担なくスキルを扱えるようになるのが15歳ということで、他の街ではこの限りではない。


「まあな。盾使いも悪くはないと思うけど…、やっぱりな~」


 アルは悩んでも仕方がない事をいちいち悩むタイプだった。そしてその時、


『ワァァァーーーーー!!!』


 大歓声が街中に広がる。今日は街中がお祭り騒ぎとなっており、道に屋台なども並んでいる。


「凄いわよ! 見て見て!」


 ミカがアルの顔をグイっと動かす。そこには巨大なモニターが設置されており、スカイボールと呼ばれるスポーツが映し出されていた。


「今日は決勝だったか? どっちが勝つんだろうな~」


「決まっているわよ! ミノタウロス・ホーンが勝つわ!」


 ミカはこのスカイボールのファンだった。アルを連れ出しては二人で観戦にも参加している。


「置いて行くぞ~」


 アルはあまり興味なさそうにして、 人込みの中を歩いて行く。


「ちょっと待ってよ!」


 ミカは慌ててアルを追いかけ、また隣に並んだ。


「少しぐらい見ていたって良いじゃない。アルのケチー」


 アルにはそんなことよりも、今から決まる自分のスキル適正の方が気掛かりだった。



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