いつか沈む島で
藍色
第1話 水没の恐怖
その揺れはいつもより激しかった。エリックは眠りから覚め、辟易とした。
「今日の地震はやけにでかいな。」
壁に固定された時計を見ると4時であった。
「勘弁してくれよ。まだ寝てから1時間しかたってないじゃないか。」
エリックは再び、ベッドにもぐった。
太陽がちょうど真上に来る頃、エリックはようやく目覚めた。多少の罪悪感に苛まれながら朝食?を食べていると、お昼の放送が聞こえてきた。
「定時放送の時間です。朝の放送でもお伝えしましたが、昨晩の地震で海面が危険水域まで上昇したとのこと——」
口に運ぶ途中のパンがエリックの手から転げ落ちた。
「昨日の夜はまだ余裕があるって言ってたじゃないか。」
「——政府は臨時会合を開き、専門家と協議を行っています。15時ごろに大統領の会見が予定されており、今後の対応について説明があるのもとみられます。会見の様子は夜の放送でお伝えします。次に地震専門家のデイクさん、海面上昇専門家のフェツェさんのお二人に、三日月島の将来や臨時会合でどのようなことが話し合われているか伺います——」
「まったくどうしてだ。みんな普通にしているし。この国がついになくなるかもしれないんだぞ。死ぬかもしれないんだぞ。」
放送を聞いたエリックは動揺に支配された。
三日月島は大海に浮かぶ孤島である。10年前から頻発する地震によってなぜか海面が上昇し続けている。三日月島政府は堤防を築き、護岸工事を重ね対処してきたが、この日ついに堤防がいつ決壊してもおかしくないところまで水位が到達したのだ。
「――ではフェツェさんは、海面の上昇は三日月島が地震のたびに海に沈んでいるからだと考えているのですか。」
「はい――」
「そんなこと、みんな薄々感じてたさ。海面があがってようが島が沈んでようが関係ねーよ。どっちみち死ぬんだから。」
エリックは放送を聞くのをやめ、もう一度ベッドに横たわった。
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