一章――後安 郎英と四人の女子――
起こしに来た幼馴染みは俺に冷たい
「――なさいよ」
――はい?
「起きなさいってばッ」
耳をつんざくようなキンキンとした声に、俺はビクッと身体を反応させて目を覚ました。
「な、なんだァッ」
「ようやく起きた……ったくぅ」
ベッドに寝転がったまま、天井を彷徨わせた目がこちらを見下ろす白ブラウスと黒ホットパンツの女子の顔をぼやあぁっと眺める。俺の耳から強奪したヘッドホンを両手に持って眼鏡越しの冷ややかとした
「え、とぉ」
まだ頭はボンヤリとしてるが、この状況は朝、幼馴染みが起こしに来るという古典的なラブコメ展開では間違ってもなさそうだな。確かにこいつは幼馴染みという存在ではあるが、そんな甘酸っぱさは俺たちの間には無い。そもそも窓から覗く空はとっぷりと暗く夜を告げているのだからおはようグッモーニンハローではなく、おやすみグンナイだ。
「お父さん達、呼んでこいってうるさいから、とっとと起きてよ。まったく、なんでわたしがあんた起こさないといけないのよッ」
ご覧の通りのツン全開なところを見れば誰しもおわかりいただけるだろうが、彼女はイヤイヤに起こしに来てるのである。階下の仲良し
「しょうがねえなぁ、付き合うかぁ」
俺は適当な愚痴をこぼしながらよっこらせと片手を着いて身体を起こす。アッ、無理に起こされたから背中痙ったかも、いやいや、立ち上がるから、そんな冷ややかに見ないで待ってなさいって。見下ろされたツンな吊り目は頭ひとつ分くらいは下になった。ふっ、今度は俺が見下ろす番だなと少しの優越感に浸るが、こいつにはどうでもよい事なようで胸にヘッドホンを掌底と突き返された。
「こんな大っきい音でよく寝てられんね、マゾなんか?」
「いやいや、ゲームやアニメのBGMは至高のリラクゼーションなんだぜ?」
俺がクラシック音楽と双璧となるゲーム・アニメミュージックの癒しを力説しようとするが、此奴にはやはりどうでもいいようで「あっそう」と言わんばかりの真顔で見つめられると何も言えなくなるのが俺というチキン
「はい、じゃあ「
ため息ひとつ吐いて言うだけ言って部屋を出ていってしまった。
「なんだよ「
姿が見えないのをいい事にちょっとだけ悪態をついてやる
「――名前呼ぶなっ
と、扉を開けて地獄耳と甲高い声が戻ってきた。
「言ってませんよぅ「
無意識とはいえ自分は名前を言ってしまっているというのに理不尽な話ではあるが、まぁ仕方がない。思春期中高生の男子女子なんてこんなもんだろう。俺「
*
「おうぅ、ろうえぇい。降りてきたんかぁ、おら飲め飲めぇ、オレンジのやつあんぞぅ〜」
下に降りるや否や我が父親「
「ちょっとお父さんそれジュースじゃなくてプレミアムみかんテイストじゃないッ」
「ぇ〜、中身はポンジュ〜ス、て、冗談だってぇっ」
我が母「
「お〜い、ろうちゃんろうちゃん。ピザあるよピザ」
急に俺の前にピザハットの箱を差し出してくる眼鏡の恵比寿顔はお隣のおじちゃん「
「ちょっとパパ、ろうちゃんはお寿司でしょう。ねぇっ大好きなお寿司」
と、お寿司の皿を持って横入りしてくるグラマラスなマダムは美咲花の母親「
「じゃあ、言われた用事は済ましたからね」
「ふん」とでも言いそうな
「ちょっと美咲花、どこ行こうってのよ?」
「家に帰るに決まってるでしょ、もう酔っぱらいの相手は懲りごりなんですっ」
やはり「ふん」とでも言いそうな台詞と共にツンな態度を取って一応、手をヒラヒラとさせてから玄関へと向かってゆくのが見えた。俺はそれをお茶を飲みながら呑気に見送った。
「おいこら郎英。ミィちゃん送ってけ」
が、急に酔いが冷めた真顔で太郎がんなことを言ってくる。いやいや、送るもなにもあーた、あの方はお隣のお家に帰るだけなんですけども。
「パカヤロウ、どんな状況だろうが女の子を送るのは男の甲斐性だべがっ」
わけのわからない理屈を捏ねられて、美咲花を送ることになりました。
「はあっ、なんですぐ隣りに帰るだけであんたに送られなきゃいけないのよっ!」
案の定、プリップリな
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