スピザイア神話よ永遠なれ

天野つばめ

神話の始まり

 クソったれな世界に産み落とされた。世界には俺以外誰もいない。実体のある生命はとうの昔に滅びた。


 何もないこの地に、見えないけれども漂っている連中。体を持たない癖に欲望だけはいっちょまえにある精霊どもを便宜上スピザイアと名付けた。


 スピザイアは実体を持たない。融合と分裂そしてそれらに伴う変異を繰り返して繫栄してきた。奴らは不死身だ。しかし、融合・分裂後の個体は果たして同じものと言えるのかなどは気にも留めず、本能のままにその生命の形を変える。それらの行為は快楽を伴うらしい。


 快楽に溺れ、好き勝手に生きるケダモノのくせに崇高ぶったスピザイアは皆、信仰心を持っていた。

 神とは、大衆の信仰の産物である。スピザイアどもが進化の過程で捨てた実体は、いつしか神秘の象徴となっていた。奴らは「神は実体を持つ」と信じ込んだ。


 幾千、幾億のスピザイアの妄想はやがて具現化する。こうして、俺はこの世界に「神」として受肉した。

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