こびと探偵はじめました

柚子桃しずく

第1話 こびとになっちゃった

やばい、学校遅刻しちゃう。

はぁはぁ、もうすぐだ~


キィーードン!!


車にひかれた。

痛い。

まだやり残したこと、たくさんあるのにわたし死んじゃうの?

嫌だ!


――


ペロッペロッ


ん? 何?

わあ!! 

逃げないと。

わあ、追いかけてくる~

というか、ここどこ?

林の中? 森?

とりあえず、あそこに隠れよう。


はぁはぁはぁ、いなくなったみたい。

今のなんだったんだろう。

犬みたいだったけど、すごく大きかった。


ここはどこだろう。

この感じ、木みたいだけど。

ん? 木の幹?


「ねえ、きみ。こんなところで何してるの? ここは危ないよ」


ええ? だれ?

ぴょこんと現れた顔立ちのいい男の子。


「さっきの犬でよかったね。猫だったら大変なことになっていたよ」


そうなんだ~


「あの~わたし、車にひかれてから自分がどこにいるのかわからなくなっちゃたみたいなの」

「車にひかれたの?」

「たぶん」

「よく無事だったね。この辺りは危ないところばかりだからこびとはみんな通らないようにしているのに」

「えっ? こびとって?」

「きみ、こびとだよね」

「わたし人間です」

「きみ、やっぱり車にひかれて頭うったのかもね」


そうなのかな~


「知り合いの医者に診てもらおう。ついてきて」

「うん、ありがとう」


森なのか林なのかわからないけど、草や木をすりぬけしばらくついていくと赤い家が見えてきた。そしてよくみると青い家や黄色い家、カラフルな家がみえてきた。

それぞれの家が、きのこのような形をしていてかわいい。


「ここが、ぼくたちが住む『ローデン村』だよ」


ここにたどり着くまで結構走ったな。運動不足で息がきれるわ。

はぁ、はぁ。


「大丈夫か?」

「う、うん」

「こっち、きて」


青い家に案内された。

家の中はすべて木でできている。ログハウスのようで、木のぬくもりを感じるわ~素敵!


「ビリー、いる?」

「……」

「ビリー」

「ここだよ」


ビリーは地下室で薬の調合をしていた。

カラフルな薬ばかりでとても綺麗。

何に効く薬なのかな?

振り向いたビリーは、とてもダンディーな男性だった。

一瞬、心をもっていかれそうになったわ。危なっ。


「どうしたんだい? ルーク」

「この子が、車にひかれていろんなこと忘れちゃったみたいなんだ」

「それは大変だ」


「こんにちは、きみ名前は覚えているかな?」

「はい。ルナです」

「ルナ、車にひかれたのは覚えているのかな?」

「はい。ひかれたところまでは覚えています。気づいたら大きな犬にペロペロされて目が覚めました」

「そうかあ~それは大変だったな」


「あの、先生に聞きたいことがあるんですけど」

「なんだい?」

「あの~さっき連れてきてくれた男の子が自分のこと、こびとだっていってたんですけどどういうことですか?」

「何も覚えてないんだね。ここは小人族が住む村なんだ。きみも小人族だろ」

「あの~わたし人間なんです」

「……プッフ」

「ほんとなんです」

「ご、ごめん笑ったりして」


まあ、そういう反応になるよね。


「大丈夫、記憶が戻るまでこの村にいるといいよ。みんないい人ばかりだから」


まあ、こうなった以上お世話になるしかないよね。


「お願いします」


「おれ、ルーク。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします。あと、助けてくれてありがとう」

「てへへ、当たり前のことしただけさ」


ルーク照れちゃって、かわいい~


「また、明日くるよ。じゃあな」

「うん」


「家の中をみておいで」

「はい」


わたしはこの家にしばらく住むことになったので家の中をみてまわった。

鏡に映った姿をみて驚いた。

ほんとにこびとになったのかも。少し幼くなった?

でも制服はそのままなのね。


この家は見た目と違って中はだいぶ広い。

玄関はいってリビングとダイニングがあり、地下室があり2階に2部屋と広い家である。


「ルナは、2階の奥の部屋を使って」

「ありがとうございます」


2階にあがり、奥の部屋にいくとベッドと机が置いてあった。

ベッドに飛び込んだ。

あ~ 疲れた~ 何が起きたのかわからないけど何とか生きていけそうだ。

人間に戻れるのかわからないけど、明日ゆっくり考えよ……ぅ。

一瞬で深い眠りについてしまった。


「ルナ」

「……」

「ルナ、入るよ。寝てるのか、疲れたんだなゆっくりお休み」


――


チュンチュン

んーあ~よく寝た。

鳥の鳴き声で起きるなんて気持ちがいい。

ん? ここどこ? ん?

あ~そうか。

こびとになっちゃったんだった。

窓を開けて外をみると、草木に囲まれていた。

青臭い葉っぱの匂いが風と一緒に入ってきた。

こんな葉っぱの匂いなんて久しく忘れてた。

なんか~子供のころを思い出す。


「ルナ、起きてる?」


1階からビリーの呼ぶ声が聞こえた。


「は~い」


1階に降りていった。


「ビリーさん、おはようございます」

「おはよう、よく眠れたかな?」

「はい、昨日ベッドに横になったら寝ちゃったみたい」

「夕食を食べようと呼びにいったら、寝ていたよ」

「ごめんなさい」

「お腹すいただろう、朝食できてるから食べよう」

「わ~い、ありがとうございます」


木でできた大きなテーブルの上に朝食が用意されていた。

木でできたお皿の上に、目玉焼きとパンそしてミルクが用意されていた。

人間と同じものを食べているのかと驚いていた。


「いただきます」


……んっ……んごっ……ごっくん!

このパンおいしい~

パンの中身はしっとりしていてライ麦の香り、そして爽やかな酸味なんておいしいんだろう。


「ゆっくりお食べ」

「……っはい」


「この卵やミルクはどうやって手に入れているんですか?」

「それは、あとでルークたちがくるから一緒にいっておいで」

「ん? はい」


買い出しにでもいくのかな? でも、買い出しっていってもどこに?


「おはよう、ルナ」

「おはよう、ルーク」


ルークの後ろから顔をだしたふたり。


「「おはよう、ルナ」」


「おはよう、えっと」

「あ、ごめん。おれはレオン」

「わたしは、ステラよろしくね」

「ルークから話は聞いた」

「大変だったわね」

「いえ、これからよろしくお願いします」


ふたりともいい子そうでよかった。

それにしてもこびとってみんな整った顔をしていて、すごく綺麗な顔をしている。

うらやましい。


「そろったな、探偵団」

「探偵団?」

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