第百二十二話 古代神殿探索 二

 森に着くと俺はいつもと同じように確認する。


「今回はたんなる探索だ」

「「「「うん (おう, はい)!!! 」」」

「いいか。無茶むちゃをするなよ」

「分かっていますわ!!! 」


 ふんすっ! と鼻息はないきあらくして意気込いきごむ龍人。

 いやわかってないだろう。まだ神殿を発見していないのにき通った二本の大きな角が光始めてるぞ。

 これは、と思いケイロンに目線を送る。

 だが首を横に振られてしまった。

 ようするに半暴走状態だということか。いかにして彼女を止めるかが問題だな。

 後は……あの夢か。

 まさかこの先にあるとは思わないがあった場合は……。


「コホン。でセレス。説明を頼む」

「もちろんですわ。まず古代遺跡と言うのは人魔大戦時もしくはそれ以降に作られた遺跡の事を指します」


 え? 歴史講座から始まる感じ?

 それ、長くなる?


「……手短てみじかに話します。ようするに古代に作られた神殿がそのまま残っていればおん崩落ほうらくしていてもその痕跡こんせきが見つかれば大発見です」

「精霊様は?! 」

「いる可能性もあります。以前に元Sランク冒険者が発見したという古代神殿では精霊術師エレメンター確認のもと、実際に精霊が視認しにんされておりましたので」

「うひょぉ! やる気でたぁ! 」

馬鹿ばか、現れるとは限らねぇだろう? 」

「やる気の問題だ、やる気の!!! 」


 説明を聞いているとやはりと言うべきかエルベルのテンションが爆上ばくあがりになった。

 はしゃぐエルベルにっ込むスミナ。

 これはセレスだけじゃなくてエルベルにも気にかけないといけないな。

 

「しかし一つ懸念けねんされることがあります」

「それは? 」

「未発見の場合、ぞくのアジトとなっていることがあるのです」


 それを聞き昨日の予知よち脳裏のうりよぎる。

 ぞく……つまりカルボ・ファイブがいる可能性だ。

 勿論その場所を引き当てない可能性もある。

 だが引き当てた場合たして戦えるのか……。

 それに人数の問題もある。

 あれだけの人数をさらっているのだ。浮かんだ人数だけなはずがない。


「——ということで早速行きましょう!!! 」


 俺が考えているあいだにセレスの講義が終わったようである。

 早速俺達は古代神殿の探索ということで森の中を行くのであった。


 ★


 森を少し行くとシルバー・ウルフにゴブリンと多くのモンスターに襲われた。

 が、連携もとらずバラバラに襲ってくるだけであまり脅威にはならない。


「何か西の森はよわっちぃな」

「数は多いんだけどね」

「リーダー格が見当たらねぇな」

「斬撃!!! 」


 ななめ上から切りかかりまた一体のゴブリンが俺達の前に倒れた。

 これなら武技は使わなくても良かったか。


 それからもどんどんとモンスターを狩っては素材をぎ、進み、倒してをり返したが一向にそれらしき痕跡こんせき見当みあたらない。


随分ずいぶんったな」

「帰る? 」

「困ります! この機会を逃せば次の陛下の誕生祭まで王都に来る予定がないのです! どうにかして、せめて手がかりでも見つけなければっ!!! 」

「いや、そもそもないという可能性もあるんだろう? 」

「……あります。ですがとりえる全ての手をこうぜずに終わるのは不服ふふくなのです! エルベルさん!!! 」

「な、なんだ?! 」

「貴方の風探知で何とかなりませんか? 」


 俺とケイロンの消極的な言葉にセレスが必死に食い下がる。

 そしてその矛先ほこさきはエルベルに。

 精霊魔法で遺跡を探すだと……。

 な、なに無茶なことを言ってるんだ?!


「や、やってみる。やってみるからそう迫るな! 」


 鬼気ききせまる様子で一歩一歩エルベルに近付き要求ようきゅうするセレス。

 流石のエルベルもその様子に負け精霊魔法を使う事になった。

 彼女は精霊弓を前にかざし、となえる。


「風の精霊よ」


 精霊弓に集まっていた光が四方八方しほうはっぽうに飛びり探す。

 だがいつもと様子が同じようだ。

 これは遺跡はないかな。

 そもそも王都の外にある森とはいえみやこを立てる時に誰かがこの付近ふきんを調査しているはずだ。

 もし古代神殿やその痕跡こんせきがあるのならすでにそれは公表されているだろう。

 胡散臭うさんくさ図鑑ずかんではなくきちんとした本に。

 セレスが知らないということはそう言った本にはっていないものなのだろうからガセが九割と考えていいと思う。


「……あった」

「「「えっ!!! 」」」


 ちょっ! えっ! あった?!


 もう一回俺は小精霊を視る。

 すると風の精霊が一部に強調きょうちょうするかのように集まってるのが視える。どうやら地下のようだ。小精霊が下に行っては上に行きと自己主張していた。


 そしてエルベルの指示だろう、そこにとどまりエルベルがそこへ行く。

 すると小精霊も役目やくめを終えたと言わんばかりに精霊弓の元へ戻ったり周りから来た小精霊たちは霧散むさんしていった。


「この下だ」

「きましたわぁぁぁぁ!!! 」

「ちょ、声が大きいよ、ティナ。うれしいのは分かるけど」

「やべぇな。本当にあったんだ。でもよ、なんで駄乳エルフエルベルのテンションが低いんだ? 」

「精霊様が……いなかったことも分かった」

「「「あ~なるほど」」」


 ガッツポーズを決めるセレスとは対照的にエルベルのテンションはだだ下がりになっていた。

 セレスは余程うれしいのだろう。龍鱗が発光し始めている。

 それをケイロンが指摘してきあわててセレスが抑えようとするもあまりうまくいかないようだ。

 表情や行動を取りつくろっても龍鱗が反応している。


「この下、ですね! 」

「行くのか? 」

「もちろんです! 」

「さっきぞくがいる可能性があるって言ってなかったけ? 」

「ありますが、そのリスクを背負せおっても行くべきです! 」

「一度国に報告した方がいいんじゃないかな? 」

「それも一理いちりありますが、先行して調査ができるまたとないチャンス! 逃すわけにはいきませんわ! 」


 そう力説りきせつするセレスを横目よこめに俺達は小声こごえで話し合う。


「どうする? 全員で止めれば流石に止まると思うが」

「ここで止めても夜抜け出してでも一人で行きそうだよ? 」

「セレスの安全性を考えるなら、一緒に行くべきだろ」

「……どっちでも」


 全員の顔を見渡しながら考える。

 確かに一人で行きそうだ。

 昨日の事もある。総合的な危険性は今放置する方が高いだろう。

 だが王都の騎士団に任せるという手もある。

 自分達の身の安全を考えるならここは引くべきだ。

 だが――


「助けて」


 その言葉が再度頭をよぎる。

 ここで引き返したら後悔こうかいしそうだ。


「分かった。行こうか! 」

「その決断力! 流石ワタクシが見込んだ男性ですわ! 」

「仕方ないな。ついて行くよ」

「駄乳エルフ。怖いならここにいてもいいんだぞ? 」

「なんだとちびっこドワーフ! 精霊様がいなくてもお宝を見つけてやる!!! 」

「よし。隊列たいれつめ。慎重しんちょうに行こう」

「「「了解!!! 」」」


 こうして俺達は小精霊がいた地面を魔法でき飛ばしそこに現れた階段を下に下りるのであった。

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