第三十七話 銀狼の秘密 四 新武器

「まずはオーソドックスな長剣ロングソードだ、ほれ」


 持ってきてくれた剣を受け取り感触を確かめる。

 長さは俺の身長の半分くらいだ。

 太陽に照らされ光っている。


 今は適正てきせい武器を調べている所。

 何が買いたいか聞かれ「け出し冒険者なのでよくわからない」と答えた結果、一から調べてくれることになった。

 なんだか申し訳ないような気もしないが命を預ける物だ。好意こういあまえ、慎重しんちょうえらぼう。


「ずっしり来ますね」

一先ひとまず外で振ってみな」


 ドルゴさんに先導せんどうされながら外へ行く。

 鉄の臭いがする建物から一変いっぺん、水のきよらかさを感じる外へ出た。

 近くに川があるのだろう。水が流れる音がする。


 誰もいない建物の裏側に来て長剣ロングソードを構える。


「じゃぁこれをきってみな」


 ドルゴさんが何やら木のような物を地面にした。

 それがある方向へ行き、ドルゴさんが離れていることを確認し長剣ロングソードで叩ききった。


「どうだ? 切った感触かんしょくは? 」

「ん……可もなく不可もなくってところでしょうか」

「そうか。ちなみに今までは何使ってたんだ? 」

ほとん短剣ダガーです。この前戦闘中にこわしてしまって……」

「そうか。そりゃぁ災難さいなんだったな。なら短剣ダガーにするか? 」

「いえ、今回は長めの武器に使用かと」

「そりゃ何で? 」

「この前肉厚にくあつなモンスターと戦った時、魔核コアまでやいばが通らず苦労しましたので」


 なるほど、と言いひげに手を当て考えている。

 そして考え終わったのか、こちらを見上げ口を開いた。

 

いくつかあんがあるが、一先ひとまず探してみるか。お前さんの武器を」

「ありがたいのですが店の方は大丈夫いいんですか? 」

「あぁあぁ、かまわねぇ。どうせこんな辺鄙へんぴなところに来る奴はほとんどいねぇから」


 ガハハハハハと笑いながらこっちにこいと手で合図へんぴしながら移動するが、それはそれで笑いごとじゃないような気もします、と思いながらついて行った。


 ★


 結局の所やはり一番しっくりと来るのは短剣ダガーだった。次に長剣ロングソードほかは全然しっくりこない。


「この感じだと長剣ロングソードだが……どうする? 」

「では長剣ロングソードにします。あと解体用の短剣もあればいいのですが」

「おう、あるぜ」


 そう言いながら戦闘用とは別の所から短剣が入ったさやを持ってきた。

 それを渡され、中身を確認する。


「じゃぁこれ二つでお願いします」

「合計で銀貨十三枚だ」


 背負袋せおいぶくろから更に小袋こぶくろを出し、それで支払う。

 ううう……必要とはいえ高い。

 無駄遣むだづかいはしていないが、節約せつやくを心がけよう。


「アンデリックとケイロンは冒険者なんだろ? 」


 ん???


 確かにそうだが言ったおぼえはない。

 ふと横をみると美肌びはだの少年が「ごめんね」というかのようにこっちを見ていた。

 ケイロンが、あぁ……俺が剣を決めている時に話したのか。

 と、言うよりも武器をえらんでいる時点じてんでわかるかもな。

 しかし、それが何なんだろうか?


「ワタシも仲間にいれてくれよ! 」


 んんん???

 なぜそうなる?


「おい、馬鹿ばか言っちゃいけねぇ! 」

「俺がやりたいって言っても父ちゃんいつも「ダメだ! せめて仲間を作ってからだ! 」って言ってたじゃないか。なら今日はいいタイミングだろ? 」

「確かに言ったがダメなものはダメだ! 」


 ドワーフ親子が言いあらそいながら喧嘩けんかのようなものを始めだした。

 時折ときおりハンマーを投げながら取っ組み合いをしている。


「……これ、どうしろと? 」

「どうもこうも」

「そもそもなんで冒険者になりたいんだろう? 」

「それだよ、それ! 」


 俺の声に反応してスミナが説明を始める。

 どうも『最高の武器』というのを作りたいらしい。

 ドワーフ族なら人生を表すような一本を作るのが生きがいのようだ。

 本来なら小さなころから材料をとり、鉄を打つのが習わし。

 だが彼女は物心ものごころついたころから人族の町にいる。

 よって手に触れることが出来る素材もかぎられている。

 なので自分が冒険者になって素材を採りに行きたいそうだ。


「冒険者ギルドに依頼を出したらいいんじゃないか? 素材採取を」

「なぁアンデリック。この店の状態を見て、言えるのか? 」


 ああ……さっし。

 つまり、お金がない! ということだ。

 なんとも言えない。

 自分の家もお金が無くて俺が出稼でかせぎに来たから何とも言えない。


「そこで、ワタシが素材をとってきて自分で作ろうってわけだ! 」

「あぁ……悪いが多分期待きたいこたえれないと思うぞ? 」

「どういうことだ? 」


 いつの間にか持っていたハンマーが変わっていた。

 彼女の身長程あるハンマーを一回転させ、金色の瞳で一睨ひとにらみしてきた。

 こわっ!

 しかし自分達の安全の為にここは引くわけにはいかない。

 一歩足をみ出し、理由を言う。


「俺達は依頼にれるまで比較的安全な依頼を受けてるから」

ようするに他の人と比べて時間がかかるってこと」

「だがこの町に少ないFランク冒険者だろ? ほとんどがD以上だから、入りたてでもメンバーに入れてくれるのはケイロンやアンデリックくらいだと思うんだけどな」


 ニヤリと微笑ほほえみを浮かべてそう言った。

 いきおいで入れてくれ、と言ったと思いきや何と計算高い。

 

「それに時間は気にしなくていい。俺自身ランク上げるのに時間かかるだろうしよ。依頼だってそうだ。ワタシだってれるまで慎重しんちょうにいくさ。ドワーフ族は人族と比べて長命だ。そのうち俺達で鉱山でも行けるようになるからだろうよ」


 思った以上にこっちに合わせるつもりだ、スミナは。

 それほどまでに『最高の武器』というものを作りたいのだろう。

 しかし……あれ、『俺達』になってる。

 いつの間にか仲間になっているような気がするのは気のせいだろうか。


「ダメなものはダメだ。それに彼らに無理を言っちゃいけねぇ、スミナ! 」

「いいじゃねぇか、父ちゃん! 」

「もし……もしも行くというのならば条件がある」


 二人のドワーフがにらみ合う。

 双方そうほうの言い分は言い終わったようだ。


「俺が作ったものを超えるものを作れ! 」

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