サンタクロースになりたい

ツヨシ

第1話

キャンパスを歩いていると、かながいた。

むこうも俺に気づき、こっちにやって来た。

かなはいわゆる幼なじみだ。

同い年で実家が隣。小学、中学と同じ学校で、高校は違ったが、大学が示し合わせていなかったのに同じ大学で同じ学部になっていた。

県外の大学だというのに。

同じ大学と聞いた時は、本当にびっくりした。

おまけにかなの下宿は、俺の下宿から歩いて二分くらいのところにある。

まあこの辺りは大学に通う学生が多く下宿しているところではあるのだが。

そうかといって俺とかなは全然付き合ってはいない。

かなの周りの評価は一言で言うと、変な奴、おかしな奴だ。

その言動は常人ではとてもついていけない。

長く友人関係を続けられた人は、誰もいない。

俺は物心ついた時からかなを知っていて慣れていたし、親密になったことは一度もないので、今の関係を続けていられるのだ。

かなは俺のすぐ前に立つと言った。

「もうすぐクリスマスね」

その言葉に俺は少し驚いた。

俺とかなは恋人でも何でもない。

つかず離れずの関係だ。

それなのにかながクリスマスを話題にするなんて。

どういうつもりだろうか。

かなが俺と恋人のようにクリスマスを過ごそうと考えているとは、とても思えないのだが。

俺が返事をしないでいると、かなは俺の前から何事もなかったかのように去った。


クリスマスの夜、俺は一人で過ごしていた。

大学生になり、一人暮らしでの初めてのクリスマスだが、俺には彼女はいないし社交的ではないので、かなほどではないが友達も少ない。

下宿で一人ぼんやりとテレビを見ていると、玄関のチャイムが鳴った。

出るとなんだか嬉しそうな顔の、かなだった。

――えっ、どういうこと?

クリスマスの夜にかなが俺を訪ねて来るなんて。思いもしなかった。

動揺している俺をしり目にかなが言った。

「ねえねえ知ってる。サンタクロースの服が赤いのはね、実は殺した子供の血を吸ったからなのよ」

それだけ言うと、かなは立ち去った。

サンタクロースの服が赤いのは殺した子供の血を吸ったからだって。

もちろんそんな話は一度も聞いたことがない。

サンタクロースがあの服装なのは、確かコカ・コーラ社が広告のために作ったサンタクロースのキャラクターが始まりのはず。

それが好評で、みながその服装のサンタクロースをあらゆるところで使い始めたために、いつのまにかサンタクロースの服装があの赤い服に統一されたのだ。

どうしてコカ・コーラ社がサンタクロースの服を赤くしたのかは知らないが、子供の血を吸ったからという設定ではないのは間違いないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る