第四章 学園ダンジョン編
特A校舎に向かう
オルトカディア王国、王都デオール。
ようやく王都に辿り着いた。
ほとんど遊んでいたから、退屈はしなかったかな。
王都デオールの入口でも検問していたが、ユウジン副団長が一声かけたら馬車のまま、全員素通りで入れた。
その時に、伝言を預かったらしく、
「公爵様は特別優秀者の校舎の校長室にいるから、今からそっちに向かうからな」
公爵様の居場所を伝言されていたようだ。俺は同意を込めて、頷いておく。
アル兄も行くのは同じ場所なので、そのまま一緒に馬車に乗ったままとなった。
馬車の中では、俺が貸していた神秘の指輪を返して貰った。
そして、ユウジン副団長からは、
「なあ、リオン。リバーシとトランプ譲ってくれねぇか?お金はもちろん払うからよ」
そうなるだろうなとは思っていた。
馬車では騎士団のみんなが楽しんでいたからな。特にユウジン副団長が。
「リバーシ2セットとトランプ1セットならいいですよ。お金はいらないです。その代わり、リバーシとトランプは今後、王都で売られるようになると思うので、買って下さいね。僕がテルーゼの町の商人さんに、どういう物か説明して来たので、売り出されたらですけど」
そう、俺はテルーゼの町を出る少し前に、商人のククトさんにリバーシとトランプを1セットずつ渡して、さらに遊び方をレクチャーしておいたのだ。
ククトさんは王都でなら間違いなく流行ると言っていたが、その時は意味が分からなかったけど、馬車の中でようやく謎が解けた。
簡単に言えば、テルーゼの町は遊ぶ余裕がないのだ。
そんな訳で、王都なら流行ると言ったのだろう。
一応、物は見せたので何で作るかは分からないが、俺の手作りよりはいい物が出来るはずだ。
「おお、助かる。ありがとな」
「いえいえ、気に入って貰えて僕も嬉しいです。アル兄も1セットずつ、渡すので使って下さい」
アル兄にも、渡そうとしたのだが、断られてしまった。
「僕はいいよ。馬車での話を聞いたら、遊んでられないよ」
馬車では遊んじゃったけど、と苦笑いしながら言っていたが、俺としては受け取って貰いたい。
「そこまで追い込む必要はないですよ。休むのも必要な事なので、気晴らしに使って下さい。それに部屋とかで魔力がなくなった時に、暇な時間がありますよね?そういう時こそ、リバーシやトランプみたいなゲームが役立ちますからね」
そう言うとアル兄も、ようやく受け取ってくれた。
俺が言うのもなんだけど、アル兄は頑張りすぎな気がするので、少しは休んで欲しいところだ。
校舎までの道を馬車から眺めていたら、戸惑いの森ダンジョンみたいな建物が偶に見えてきた。
どうやら、王都の内側にも、ダンジョンがあるようだ。アル兄が教えてくれた。
これには、ちょっとだけ驚いた。俺の中のダンジョンとは、町を出て向かうイメージがあったからな。
そういうやり取りをしていたら、特別優秀者のA校舎、通称[特A校舎]が見えてきた。
「あれが特A校舎ですよね?かなり大きくないですか?」
高さこそ5階までしかないが、日本の小学校より大きいんじゃないかな。
確か特別優秀者は人数がかなり少なかったはずだ。4学年全員分だとしても大きすぎるとおもうんだけど。
「特別優秀者の生徒は、全員ここで寝泊りもしているからな。学校と寮が一緒になっているんだ。あと食堂や図書館なんかもあるぞ」
貴族の場合は、ほとんどが寮での暮らしを体験させられるんだとか。従者も付けずに、自分の事は自分で、ある程度出来るようにしようという方針みたいだ。
それは例え王族だとしても、条件は同じらしい。家でもその為のトレーニングをするらしい。ただ、漫画とかでよくある、平民も貴族も生徒はみな平等というルールはない。あるのは生徒より教える側の先生の方が、上級に当たる事だな。
なので、貴族の子供は、しっかりと貴族らしい行動をとらなければいけない。平民を導くようにと。
とはいえ、これは物理優秀者のB校舎、通称[物B校舎]の生徒に多く当てはまる事で、他の校舎は貴族と平民が一緒になるのが偶にしかない。
特A校舎と魔法優秀者のC校舎(魔C校舎)は貴族がほとんどで、一般のD校舎(一般校舎、又はD校舎)は平民がほとんどだ。
それと、寮に入らない生徒は基本的に王都に住んでいる平民の子供で、その子達は家からの通いになる。
話がある程度終わったタイミングで、特A校舎の入口に馬車が着いた。
俺が公爵様との会談で、押し通したいお願い(勝利条件)は2つ。
1つはマニュアルを広める事。最低でも俺のパーティーメンバーには、俺の全知識を継承する事だ。
学校でパーティーを組む場合は、最終試験でそのパーティーに先生が加入する為、4人グループが最大だったはずだ。
それなら、俺以外の残り3人を鍛えて、迷いの森以外の4大魔境に派遣して、何とかして貰おうと思う。こっそり教えてもいいが、許可を貰った方が後々面倒な事にはならないだろう。まだ見ぬ他の3人が引き受けてくれるかは、分からないけど。
2つ目は、終わった後の自由だ。
こういう展開のテンプレでは、次男だからと自領を継がない替わりに、貴族に叙爵されて、別の領地経営をさせられる事になってしまう可能性がある。漫画や小説で見た事あるからね。
そうならない為に、終わったら冒険者活動が出来るように、しっかりと根回しというか約束を取り付けておく必要がある。
貴族を抜け出る事になるのかは、聞いた事がないから、分からないが、その辺りも話し合う必要があるだろう。問題が片付いたら、家族との話し合いも必要かもしれないな。
特A校舎に入って、しばらくすると、アル兄とはお別れになる。
簡単な引っ越しだ。
本来なら、入寮から4年間同じ部屋を使っていたところをとある事情により、1年に1回部屋を変更する事になった。
その為、1年生は1階、2年生は2階を使用するようになり、アル兄も引っ越しという訳だ。
ただ、この世界には魔法袋がある為、部屋を出るときには既に片付けは終わっていて、今から新しい部屋に行くだけのようだ。
そして、俺はユウジン副団長と一緒に校長室へと向かう途中に、室内なのに、扉の窓から中を見たらデカい空間が見えた。
「ユウジン副団長、大きい部屋があるんですけど、ここって何の部屋ですか?」
普通は何とか室とかって書いてあるはずだけど、何も書いてない。
「ここは魔法を訓練する部屋だな。ダンジョンに行く前に練習する場所の1つだ。他には、木で出来た色々な武器が置いてある練習部屋もあるぞ」
やはり、異世界だ。魔法の練習する室内部屋があり、しっかりと結界も張ってあるとの事だ。
部屋を色々見ながら、5階の校長室まで辿り着いた。
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読んで頂き、ありがとうございます。
これより4章開始です。
予定では土日更新で行きます。遅くなりましたが、この更新は土曜日の分です。
書く時間がある時は、その都度更新していきますので、よければ続きも読んで頂けるとありがたいです。
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