冒険者ギルドの資料室

 ククトさんの所からの帰り道でコウガと分かれ、俺は冒険者ギルドへ向かっている。

 今日は、依頼は受けないが2階にある資料室を見に行く予定だ。


 ギルドに入って、まずは受付に資料室へ入る許可を貰いに行く。

 もちろん受付嬢はいつものエミリーさんの所だ。


「エミリーさん、こんにちは。2階の資料室を見に行きたいのですが、入るのに許可は要りますか?」


「リオン君、こんにちは。資料室に行くのに許可は必要ないよ。そうだ、今受付の仕事に余裕があるから一緒に行って説明してあげようか?」


「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えてよろしくお願います」


 受付カウンターの端から出てすぐの階段を上った部屋が資料室になっているようだ。

 資料室の中は壁際に本棚がいくつか並べてあり、中心には机と椅子が均等に配置されている。

 入って左奥に扉があるので、向こうにも部屋があるようだ。


「リオン君、ここと隣の部屋が資料室になるんだけど、隣の部屋の資料室へは成人してからじゃないと立ち入っちゃいけない事になっているの。だから、今日はこの部屋の資料だけでお願いね」


 成人してからじゃないとダメってそれは大人の本がっっって、ギルドにそんなの置いてないか。一体どんな本が置いてあるんだ。


「わかりました。ちなみに隣にはどういった資料があるか聞いても大丈夫ですか?」


「前に話したと思うんだけど、中級ダンジョンの詳細は隣の部屋にしかないの。リオン君がこんなに早く資料室に来るとは思わなかったから中級ダンジョンの資料の話をしちゃったんだけど、成人というか正確には学校に行って帰ってくる時まで待って欲しいの。ごめんね」


「わかりました。今日はこの部屋にある資料を読ませて貰いますね」


 普通は子供が資料室に来る事はないとの事だ。

 大体は親から説明を受けるだけで、十分らしいので、俺はかなり珍しいと言われた。

 それに資料室の利用自体が少ないそうだ。今も他には誰もいない。

 隣の部屋の資料は、学校から1回帰ってきた時に見せて貰えばいいから、今日はこの部屋にある資料を見てみようと思う。


 とりあえず、本棚から気になる資料をいくつか持ってきて机で読むことにした。

 ダンジョンや戦闘、近隣の採取物に関連した資料というか本を机に並べる。


 最初にダンジョンに関連した本を読んでみると、戸惑いの森ダンジョンの地図が載っていた。

 いつかはマッピングしたいと思っていたけど、これを書き写して正しいか検証するだけでよさそうだな。

 それ以外は魔物情報が少し載っているだけだが、やはり鑑定を使える人がいないのか詳しい情報は書かれていなかった。

 さらに言えば、ボスを倒した際の宝箱情報も載っておらず、俺にはあまり有益な情報はなかった。


 もう一冊のダンジョン関連の本というよりは地図のようだ。

 オルトカディア王国周辺にどんなダンジョンがあるか載っている。


「エミリーさん、このテルーゼの町から2番目に近いダンジョンは行くまでにどのくらいの時間がかかるかわかりますか?」


 温和な平原ダンジョンという初級ダンジョンらしい。

 どのくらいの距離かは分からないが、ここから2番目に近い距離なので、一度は違う場所に行ってみたいと思ったのだ。

 いろんなダンジョンを攻略したいからね。


「そのダンジョンの近くに小さな村があって、そこまで馬車で半日ぐらいはかかるかな。もしかして行ってみたいの?」


「そうですね。いろんなダンジョンを攻略したいとは思っています」


「そうなんだ。結構遠いから、領主様と相談した方がいいね」


 そうだな。とりあえずはコウガと相談して決めよう。


 それから戦闘系の本には各戦闘スキルのアーツについて少し載っていた。

 少しというのはどれも初級アーツ、つまりレベル3までのアーツが載っているだけだった。

 あとは武器の手入れの仕方や扱い方などの基本的な事が書いてある感じだ。


 それから近隣の採取物の本で癒し草の採取場所を本を見ながらエミリーさんに教えて貰った。

 場所はダンジョン付近で採れる場所をいくつか聞いておいた。


「そうだ。以前話して貰った緊急依頼について聞いてもいいですか?」


「大丈夫だよ。緊急依頼の多くは危険な魔物が町の近くで発見された時に出される事が多いよ。主にCランク以上の魔物の場合は間違いなく緊急依頼になるし、Dランクの魔物でも、やっかいな相手の場合は緊急依頼になる事もあるからね」


 町に被害が出る前に討伐したいという事だろう。

 確か緊急依頼は普通の依頼よりも多くの報酬を貰えるという話だったが、緊急性と危険度を考えれば納得だ。


「なるほどです。指名依頼についても聞いていいですか?」


「指名依頼は依頼人に気に入られたら、指名して貰えるって感じなんだけど、明確な条件とかはないの。ただ、長く真面目に働いている人の方が指名依頼を貰える事は多いかな」


「なるほど、ありがとうございます。参考になりました」


 エミリーさんが依頼について教えてくれたのを最後に受付業務に戻っていった。

 夕方からは忙しくなるからな。いつまでも俺に付き合ってはいられないだろう。


 俺はエミリーさんと分かれてからは、戸惑いの森ダンジョンの1階層と2階層の地図を俺のダンジョン攻略ノートに書き写していく。

 明日は地図が正しいかの確認をしながら、道中の宝箱を探すとしようかな。

 書き写しが終わったら、ギルドを後にして家に戻った。


 家に帰って夕食後、コウガに別のダンジョンに行ってもいいか聞いてみたが、いい返事は貰えなかった。

 特に中級ダンジョンには行ってはいけないと念入りに言われてしまった。

 どうやら、俺が思っている以上に中級ダンジョンは危険が多いのだろう。

 もしくは仲間がいないと危ないからかもしれないな。どんな罠があるか分からないからな。

 学校へ行けば、色んなダンジョンには行けるようなので、それを楽しみに取っておくことにした。


 なので、学校が始まるまでは、いつものダンジョンを周回する事になりそうだ。

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