第12話 狐の嫁入り? (1)
「今日は本当にありがとうございました」
「いいや、いいや、別にかまわん。かまわんぞ」
黄色、うんこ色をしたド派手なカラーのキッチンカーの店主、翔太から頭を下げられお礼を言われる。述べられる御神体、お稲荷さま、女神さまのだが。
翔太は未だ巫女服姿の麗しい銀髪の少女が誰なの知らない。わからないから。
「あの、少ないですけが。これを受け取ってください。今日のアルバイト代です」と。
お稲荷さまに一万円が入った封筒を手渡そうと試みると。
「……ん? 亭主、これはなんじゃ?」
お稲荷さまは自身の首を傾げながら相変わらず翔太のことを店の店主、店長、社長と呼ばずに亭主と。
先ほどから色々な
翔太が真心込めて焼いた柔らかいソフトワッフルを購入しにきたお客さま達なのだが。
今日のお客さまの大半は若く麗しい女性達ばかりの上に、皆さまは独身女性達、年頃の女性達ばかりでね。
このキッチンカーの店主、社長さんを見れば。
(あら、どうしましょう?)
(とても格好が良い。イケメン男性ではないですか)
(あらあら、格好良いわね。このお兄さん頂き。頂きます)と思えばね。
「お店のお兄さん彼女さんは?」
「社長さん奥さんは?」
「今彼女さんいます?」
「お兄さん彼女を募集していないかな?」と。
先ほどの麗しいOLのお姉さま御二人に続くように。
その後も翔太が焼いたソフトワッフルと一緒にお店の店主──。翔太まで購入、お持ち帰りをしようとしたお客さま、お姉さま達へと。
「お姉さん達、家の亭主に何用じゃ?」と。
お稲荷さまが訊ねる。訊ね続けた上に、ちゃんとお店の番──。呼び込みなどの誘い。客引きもできたから。
このキッチンカーの店主、翔太へのアプローチは全部失敗、不発で終わった上に、彼の持つ病気、心の病であるパニック障害も出ることなく無事に仕事……販売の方も終わり。
店の主翔太にとっても初めての一日十万以上の売り上げが出たので彼は、翔太は歓喜──。
これで取り敢えず、この黄色、うんこ色をしたキッチンカーのローン、支払いの方ができる。できるからと歓喜しながらお稲荷さまへと感謝の心を込めて今日の日当を日払いで手渡したのだが。
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