デスゲーム2日目~人狼編②~


「投票は決まってるわ。山本エリ、あなたよ」


 勢いよく口火を切る。ここは攻め時だ。


「……まあこうなったら仕方ないね」

「随分と物分かりがいいのね」

「どう考えても逆転は無理だからね☆まあ、同陣営の勝利を願うよ。賞金は遺族に振り込まれるらしいからね」

「そうなの?」


 マドカが驚いたように声を出した。そういえば、今日のマドカは黙り込んでいた。


「あんたねえ……命が懸かってるんだから概要はよく読んでおきなさいよ。小さく書いてあったよ」

「そうなんだ……」


 私も確認はしていたが、正直どうでもよかった。あんなクソみたいな家のためになるなど文字通り死んでもごめんだ。


「……殊勝なことね。その思いが家族に届くようお祈りでもしておくわ」

「葬式でも挙げてくれると助かるな……そうだ、どうせ吊られるんだから、遺言言わせてよ」

「気乗りしないわね。人狼に引っ掻き回されるだけじゃない」

「心が狭いな~~、仕方ない、黙って吊られますよ。もう投票タイムでいいんじゃない?」


 タイミングよく、天井からアナウンスが流れた。


『時間になりました。ここから一切会話は禁止です。人狼だと思う人物をタブレットで選択し、送信ボタンを押してください』


 ……どうも引っかかる。白にしては潔すぎる。というか、エリ目線なら真占い師は水瀬ではないと分かるはずなのに、何も抵抗しなかった。遺言の許可など取らず、水瀬は黒だと叫べばいい。まあ吊られた後の霊媒で役職が開示されるから意味はあまり無いか……


『全員の投票が完了しました。山本エリさん 5票 水瀬マキさん 1票 投票の結果、山本エリさんが吊られることになりました』


 エリは水瀬に投票したようだ。それはそうだろう。


『山本エリさんを執行します』


「ぐうううああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!????……これ、思ってたよりキツ……がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 エリがのたうち回る。全身に痛みが回っているようだ。体中に電撃が走るような、そんなリアクションにも見えた。


「ああ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!はぁ……はぁ……先に……向こうで待ってるよ……ガハッ…………」


 エリは口から血を吐き出しこと切れた。最期の瞬間、こちらを見ていたのがなんともいやらしい。私は死なない……死ねないんだ。

 円の真ん中には四体の死体が並んでいる。再度、天井からアナウンス音が流れた。どうやら霊媒の結果を伝えるらしい。



『山本エリさんの役職は……人狼です』




 え?




 私はしばらくアナウンスの内容が信じられなかった。各々が部屋に戻っていく中、しばらく立ち尽くしていた。水瀬がこちらを見て、ニヤリと笑ったのが遠目で見えた。





 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 もはや、昼食など喉を通らない。


 山本エリは人狼だった。これで五人一狼一狂人の盤面だ。勝ち確盤面がフラットに戻された。


 意味が分からない。何が起きている?


 水瀬は人狼でありながら身内を切った?それとも真占い師でありながら私を泳がせている?


 どちらにしても意味不明。理解不能だ。これは本当に人狼ゲームなのか?


 最初にハルが言っていたことを思い出した。このゲームは水瀬が仕組んだものじゃないのか、と……


 こうなってくるとその可能性が濃い。水瀬にとって理想的な展開が続いている。しかし、それを指摘することはできない……もう水瀬を吊ることはできない。水瀬を吊ると私も死ぬ。水瀬が真占い師という可能性もあるが、だとしても、高確率で死ぬ博打すぎる。


 ……いや、冷静になれ。五人一狼一狂人はフラットではない。人狼が白を一人噛めば、陣営の比率は1:1になる。そうすれば狂人COをして終わりだ。


 そう、終わりだ……通常の人狼ならば。私はもうこれで水瀬が真占い師という可能性に賭けるしかないのだ。


 もやもやとしている中、スマホから通知音がした。DMだ。宛先は……優木サクラ。


『マドカに気をつけて』



「クソッッ!!!!!」


 スマホを布団に投げつけた。もう意味が分からない。何がどうなっているのか、私にはわからない……


 あとはもう、祈るだけだ。

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