第4話You are…

「レンタル・ドール」というサービスにはよくわかっていない部分が多い。更に、それをサービス提供者自身もわかっていない。

そのため説明が曖昧になり誤魔化しているような文も多く見られる。

しかし、その目的が魅力的すぎた。


伝えられなかった言葉を亡き後で伝えられるかもしれない。

残せなかった最後の作品を遺せるかもしれない。

できなかったことができるかもしれない。

死んだ人が、生きている人に会えるかもしれない。


うしなった未来を、過去の自分であっても、偽りの自分であっても、「ドール」の中で見ることができるかもしれない。

途絶えてしまった未来に死者が存在できるかもしれない。どんな形であれ。


死んだ人には何もできない。それが覆るかもしれない。

それはとても魅力的なことなのだ。




このビジネスは、「死んだ人」に対して「生きた人の体」を貸し出すというサービスである。




どこか矛盾が生じるこのビジネス。


あなたは興味を持っていただけたであろうか。







では、最後にもう一度あなたに質問をしよう。


あなたの名前は?


「I am …

××××××」




あなたは、誰だろう。

あなたは、誰だっただろう。


あなたは答えるしかない。


「I am me.」


あなたはあなたである。


あなたが信じる限り、あなたはあなた自身なのである。




プロジェクト、レンタル・ドール。

それは、死んだ人が生きている人の体をレンタルするサービスである。


そこでは「ドール」には人形としてしか価値がない。生きた人形、ドール。一般人、ドール。ただの商品としてしか、ただの検体としてしか生きた人を見ていない。

そんな、サービスである。

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