白い女

ムラサキハルカ

「少し遊んできなさい」

 おとうさんに言われて、ぼくは外にでた。じぃーじぃー蝉がないてる。ものすごくあつい。

 たったいま、でてきたばっかりのウチの中からは、おとうさんやおかあさん、それにおじいちゃんやおばあちゃん、あとあとなまえもよくおぼえていないおじさんやおばさんたちのわいわいがやがやがきこえてくる。

 あそこにいるのはすごくたいくつそうだったから、ひとりであそんでこいっていわれたのはうれしい。

 けど、どうしよう? おじいちゃんとおばあちゃんのうちにはぼくのおともだちはいないし、たまにあそんでくれるいとこのおねえちゃんやおにいちゃんたちも、ウチのなかでおじさんおばさんたちとお話をしている。

 おねえちゃんやおにいちゃんたちも、おじさんやおばさんとおなじだったんだなって、さみしくなっておニワを走りまわる。

 あんまり見たことのないお花や、トカゲさん、カマキリさんなんかをみつけておっかける。けど、すぐにつまんなくなる。だって、お花はきれいだけどそれだけだし、いきものはかっこいいけど、ちょこまかしててつかまんない。つまんなくてつまんなくてつまんなかった。

 どうしよう、っておもってきょろきょろしてたら、ウチの門の前に誰かたってた。

 白いお姉さんだった。長いつばのついたぼうしも、服もスカートも、ついでにはだやかみの毛も真っ白だった。

 変なの。そうおもって、しばらくお姉さんをみてた。

 目があった。お姉さんはにっこり笑ってから、おいでおいでする。ぼくはたいくつだったから、お姉さんのところへとはしった。知らないひとについていっちゃいけない、っておかあさんがいってたのをおもいだしたけど、ばれなきゃいいかな、って。

 お姉さんはぼくをだきしめてから、髪の毛をなでなでする。たぶん、お花のにおいかな。うん……いいにおい。あと、やわらかい。

 しばらく、そうやっていた。なんでかな。とてもすずしかった。

 がばっとお姉さんがはなれる。もうちょっと、こうしてたかったのに。

 おねえさんはウチの外をゆびさしてから、あいてる手でまたおいでおいでした。ついてこいっていってるみたいだ。

 ちょっとだけ、どうしようかな、って。だっておとうさんにはおニワからでるなっていわれてる。

 けど、お姉さんがくちびるのはじっこをあげると、ゆかなきゃ、って気になる。ううん、そうじゃない。ぼくがお姉さんといっしょにいたいんだ。お姉さんのそばに。

 手をつながれる。ひんやりとしててきもちいい。そのまま、いっしょにあるく。このまままっすぐいくとだがし屋がある。できれば、そこでいっしょにアイスをぺろぺろしたり、ラムネをガブガブできたらいいなぁ。

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