第13話 体育祭
―ピコン
またメッセ―ジが届いた。
メッセー1件:瀬戸内
「瀬戸内」の文字にドキドキする。翔くんからのメールより嬉しいものはない。
『あのさ、最近大丈夫?』
え、どうして。最近ずっと、イライラでいっぱいだったはずなのに、
翔くんのたった一言で、怒りも悲しみも、憎悪のような醜い感情も浄化されていく。
誰に心配されても閉ざしていたはずの心があったかくなるのを感じた。
『全然大丈夫!ありがとう。』
翔くんの前だけではせめて素直な私でいたい。嫉妬も恨みも怒りもない綺麗な心で。
『無理すんなよ。』
慣れてない不愛想な言葉だけど、私の一番ほしかった言葉。
翔くんはずるい。そんな優しくされたらもっと好きになっちゃうじゃん。
こんなに好きにさせても振り向いてはくれないのに。
ねぇ、涙ってこらえるの大変なんだよ?
私の気持ちがときめくのはやっぱり翔くんだけなんだ。
2年生に入って初めての行事、体育祭。
クラス対抗で大縄跳びをした。
背の高い翔くんともう一人の男子が縄を回す。
「端から小さい順に2列に並べ!」
生徒会長くんの指示でみんな並び始める。
背が低い私の場所はやっぱり一番前。ちょうど縄を回す翔くんの目の前だった。
「翔ー!もうちょっと縄張ってくれない?」
「OK!」
練習を始めて30分翔くんは縄を回し続けていた。
さすがにバスケ部の翔くんでもそろそろきつそう。
腕にぐるぐるにまいた縄を一瞬ほどいたときに、指から血が滲んでるのが見えた。
大丈夫かな?
それでも文句言わずに一生懸命縄を回し続ける翔くん。そういうところ本当に好き。沢山練習したけど、結果は、残念ながら2位に終わった。
「お疲れ。よかったら使って!」
「え、これ使っていいの?サンキュー!」
そっと翔くんに絆創膏を渡した。
少しびっくりしてたけど、私の大好きな優しい笑顔でほほ笑んでくれた。
不意うちの笑顔に、一瞬で体中が熱くなる。
…いつになったら慣れるんだろ。
久しぶりの行事。みんなで盛り上がって大忙しの一日だったけど、
クラスの仲も深まったし、
何よりも、翔くんの笑顔が見れたからいいんだ。
閉会式も終わって、帰ろうとしていると、隼人が走ってきた。
「りあ、一緒に写真撮ろう!」
「うんうん!撮ろ!」
付き合って3カ月、そういえば一回も写真撮ったことない。
隼人から誘ってくれるなんて珍しいな。
二人とも恥ずかしくてかたい表情だったけど、これも大切な思い出。
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