第4話 ひと時の幸せ

もう少しで夏休み。平和で穏やかな日々が続いていた。終業式1週間前、ベッドの上に寝転がって携帯を手に取ると、

―ピコン

「誰からだろう。」

画面を見ると、隼人君だった。

『あのさ、』

開こうとすると、すぐにメッセージは取り消された。

何回も送られてきては送信取り消しされる。

用あるならはっきり言ってよ。

何となく言いたいこと、わかった気がした。

なかなか切り出さないから、私からメッセージを送った。

『隼人くん』

すぐ返信が返ってきた。

『なに?』

『隼人君の彼女にしてください。』

まだ早いかもって正直思った。でも、翔くんへの気持ちから逃げたかった。

隼人くんを手放したくなかった。

ただそれだけ。卑怯だ、最低だ。

本当は、隼人くんに拒絶されてたら良かったのに。

「いいよ。」

隼人くんは、何秒もたたないうちにそう言ってくれた。違う。私、いいよって言ってくれるってわかってた。そう言ってくれるのを望んでた。

純粋ぶって、いい子ぶってるけど、私ってこんな計算高かったっけ。

でもね。この時確かに私は隼人くんに惹かれてた。

それは確かなんだ。

隼人くんありがと。そして、ごめんなさい。


真っ先に、私は中学からの親友、咲笑に連絡した。彼氏できたら咲笑に一番に報告するって決めてたんだ。

咲笑は私の家族のように大事な友達。すごく可愛くて、面白くて優しい。

気が合いすぎて、親友通り越して双子のような存在。

どんなに離れても何でも話せるし何でも相談できる私の大切な人。

「咲笑―!私彼氏できたよ!隼人くんっていうん だ。」

「え、りあ!おめでと。会わないうちにリア充になっ たのか !!彼氏できても相手してよ !」

咲笑はすごく喜んでくれた。

心優や菜摘ちゃんにも報告すると、みんな喜んでくれた。心がちくりと痛んだ。喜んでくれたみんなに罪悪感に襲われた。

でも、本心を言えるはずがない。絶対に言わない。

都合の悪いことは誤魔化す。わがままな私。弱い私。

こんなこと願っちゃいけないけど、願わずにはいられない。間違ってるかもしれないけど、正しいことじゃないかもしれないけど、どうか、どうか隼人くんのことを世界で一番好きになれますように。

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