クローバー

平野 莉愛

第1話 恋の始まり

    どんなに辛くて泣きたい日も、悔しくて逃げ出したくなった日も、


    君の何気ない仕草や言葉が嬉しくて、頑張れる。笑顔になれる。


         それはとても単純で、何よりも心強い。


         だから、叶わないとわかっていても、


              たとえ傷ついても


          その声や笑顔を期待して待ち続ける。


      「諦めよう」と「諦めたくない」を何度も繰り返して、


             "やっぱり君が好きなんだ"


                と気づく。


             他の人では絶対にダメで、


               かけがえなくて、


             いつも私の心の中にいる人。


        私にとって君は最強で、最高の「ヒーロー」でした。





私は耳元で鳴り響く目覚ましに叩き起こされた。眠い目をこすり、手を伸ばして、アラーム音を止める。

「え、まだ 4 時 30 なんだけどー。」

もう一度布団の中に潜り込むと、

―ピピピピッ、ピピッ、ピピピピピピッ!!!

数分もしない間に、またなり始めるアラームに完敗した私は、重い体を起こして、

今日もまた、学校へ向かう支度をする。

今は 5 月。私は高校二年の春を迎えた。いわゆる Sjk ってやつ。

私の通ってる学校は県内でもトップクラスの進学校で、勉強に熱心な子が多い。

地元の中学校ではトップだった私も、さすがに授業についていくのに精いっぱいで、課題とテストに追われる日々を過ごしている。私の学校では、早朝講座という SHR 前の授業があって、朝5時に起きないと授業に間に合わない。

「りあー!早く準備しなさい、遅刻するわよー!」

お母さんに毎朝急かされて、なんとか間に合っている。朝早いから、ほぼ寝起きの状態で家を飛び出して、ギリギリ最寄りの駅から電車に乗る。

私のいつも乗っている電車には、私と同じ女子高生がたくさんいて、メイクもヘアスタイルもバッチリ可愛い。

『すごいなぁ。』

移動中、イヤホンで音楽を聴きながらすこし憂鬱な気持ちになる。

これが私の朝の日課。

教室につくと、いつものように皆、自分の席でそれぞれの勉強している。

邪魔にならないように、静かにドアを開けて、自分の席についてとりあえず単語帳を机に広げてみる。

「こんなJK ライフのはずじゃなかったのに。でも頑張るか。」

そう呟いて気合を入れる。周りのクラスメイトが頑張っているのに、私だけが青春を追い求めるなんてことできるはずない。

まして、授業にすら追いつけてなくて悲惨な成績を取ってる私が。

「あー。やっぱり眠いなぁー。」

10 分ほどたって顔を上げると、一番前の席でがむしゃら勉強している一人の男の子が目に入った。瀬戸内翔くんだ。

友達の実桜が「イケメン~!!」って騒いでたような。

私はそうは思わないけど。だって、人って顔だけじゃないじゃん?イケメンだったら何なの?面食いの私が言えないけど。人気者ってどうしてもすきになれない。そんなことを考えて彼をずっと眺めていると、突然立ち上がって私の方へ近づいてきた。

彼と目が合う。

琥珀色の澄んだ目。本当に綺麗だと思った。自信と希望に満ち溢れてる。

そして、長いまつ毛に筋が通った高い鼻、他人をひきつけないほどクールで整った顔。見上げるほど背が高くて細身なのにたくましい背中、袖から出てる腕にはしっかり筋肉がついていた。

少し茶色掛かった、ノーセットのサラサラヘア。

―私の思い描いていた理想像、そのものだった。

すぐに目をそらした。全身が熱い。顔から全身に熱が伝導していく。

この感じ、なんて言ったらいいんだろう。

雷がおちた?ビビットきた?ううん、そんな言葉じゃ収まらないほどの何か。

ほんの一瞬なのに時が止まった感覚。私の中に広がる熱。

君の表情が頭から離れない。

私きっと今顔真っ赤になってる。

どう表現したらいいのかわからない。

だって、こんな気持ちになったの人生で初めてだから。

「りあー。おはよう!」

親友の心優の言葉にビクッとして、やっと現実に戻された。

「あ、お、おはよう!心優!」

なんとか心優に返事したけど、それでも、君のことが頭から離れない。

これを『一目惚れ』っていうのかな。

この時、目が合ってなかったら…

あなたを好きになることもなかったのかな。

これが、私の恋の始まりでした。

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