第6話 最後の出勤日

 定期券で電車に乗るのはきっと今日が最後です。


 7年通った筑波ともお別れです。

 僕は会社のバスやらいろいろなものを写真に撮っていました。


 出社してもほぼほぼ仕事はありません。

 二か月かけて引継ぎ資料を作り、デスクとロッカーを片付けていましたから。


 よく退職される方が全社一斉メールを弊社ではしますが、私はなんかね、知りもしない人から来るのが嫌なので、一人ひとりに最後のご挨拶を出しました。


 自分のフォークリフト用ヘルメットから名札を剥がし、ロッカーとホワイトボードの名札も取りました。


 6月半ばまでの有給申請は数日前にすませていました。


 システムで申請するのですが、最後にクリックするときはちょっと躊躇しました。

「これクリックしたら終わりだよな…」

 いろいろ終わりますから。


 派遣さん、若い女性が今日から私の代わりとして来ました。


 若い女性でしたので、

「堀…いつでも帰っていいぞ…」

 と野沢さんに言われました。

 このほうが楽ですよね。


 嫌ですね、最終出社日って…。


 お菓子を各部署に配り、何をするでもなくいろいろと倉庫内を歩いていました。


「この鳩避けネット大変だったな…」

 鳩はその後、倉庫に入ってきませんでした。


「ここでみなさんと何度も桜を見たね…」

 もう4月の末ですので桜は散っています。


 野生の鹿が来たり、散弾銃の薬きょうが落ちていた駐車場もいつもと同じく静かでした。


「筑波に…現場に来れてよかったな…。システム室で終わらないでよかった…」


 と異動を今更ながら感謝しました。


 帰るさいに部長に呼ばれました。

 最後のご挨拶とのことでした。


 部署の会議のさいにはしたのですがね…

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