第34話

それから、ボクは先生のところに下宿し、日中は学校、夜は占いの勉強をすることになった。

「えーと、これは……みずの……え!」

「ちがーう!癸はみずのとじゃ!水の陰。水の弟やけん、みずのと!いい加減覚えんさい!」

「うーん……わっかんないなあ」

「わからんならわかるまで覚える!いーうー?」

「ひつじ!」

「それは覚えたならよし!」

「いいんだ……」

なんだかんだ言って、占いの勉強は楽しい。

ハードなスケジュールだけど、楽しいからこなせる。

***

「なんかさ、求村くんてさ……気持ち悪いよね」

「なんで男なのに女の格好してんの?」

「オカマなの?」

「ゲイかもよ?」

「ウェー」

学校の人たちは口々にそんなことを言う。

聞こえるように言ってるの?

ボクに聞かせたいの?

ふいに、その人たちが気味悪く感じた。

帰るとき、靴箱の中にメモが入っていた。

オカマ!キモい!と書いてある。

足元がグラグラと崩れていく感覚に陥った。

なんで?

ボク、何も悪いことしてないじゃん。

誰にも迷惑かけてない。

ただ見た目が女の子みたいなだけじゃん。

どうして?どうして?

ポケットの中にメモを入れ、船に乗って民宿へ帰った。

「おお、おかえり」

先生、気づいてない。良かった。

「一言いいか?」

「?」

「呪いの言葉に負けんな。負けを認めたら、その瞬間に人生が潰れる」

「気づいてたんですか?」

「ワシを誰や思うてる?」

と、言って、カカカと笑った。

「こういうのは、オトナの出る幕やない。あーたはあーたのやり方でいじめに立ち向かいんさい」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る