第24話 君だから

カラオケの個室に入る。

「何か冷たいもの持ってくるね。」

「うん、ありがとう」

カウンター横のドリンクバーで氷に水をいれて、持っていく。

体調不良ではないから何を持っていけばいいかわからなかった。

その前に、個室に男性と2人きりって……大丈夫なんだろうか?

男性側はそういう気になってるし、無理やり襲われたりとか、しないだろうか?

16歳の頃のことを思い出し、ゾッとする。

あんなことを、されるのだろうか?

怖い。

でも……

考えていたら、ドアの前にいた。

その先にはきゅうちゃんがいる。

きゅうちゃんはオトコになっている。

怖い。

ゆっくりとドアノブに手をかけ、開けた。

きゅうちゃんは椅子に腰掛けてうずくまっている。

「きゅうちゃん、大丈夫?水持ってきたよ」

「あり、がと、」

きゅうちゃんは、グラスを受け取ると、一気に飲んだ。

さらにうずくまる。

しばらくそのままだったが、収まったらしい。

「歌う〜」

1曲歌ってからはもういつものきゅうちゃんに戻っていた。

「ごめん。恥ずかしいところ見せちゃった」

「かなりびっくりしたよ」

「あは。ごめーん!」

「もー!」

2人でお互いのおでこをくっつける。

綺麗な顔。お人形さんみたいな顔がそこにある。

目を閉じているきゅうちゃん。

いいのかな?

きゅうちゃんは、私なんかでいいのかな?

わからない。

互いの息がかかるくらい近い。

甘い、バニラの香水が鼻をかすめる。

唇をそっと重ね合わせる。

違う。

今までの誰とも違う。

男とか女とかは関係なく、きゅうちゃんはきゅうちゃんなんだ。

性別じゃなくて、きゅうちゃんだから、好きなんだ。

理由なんておろかなことをぐずぐず考えなくてよかったんだ。

「うふ。つきちゃん、可愛い」

「あ、あああ……」

「大人のチューしよっか」

と、言いながら、また、口を合わせる。

今度は舌が入ってきた。

熱くて、柔らかい。ねっとりと絡みついて離さないような動き。

歯列をなぞるように舌が動き、唇の内側の粘膜をそっとそれが触れた時、たまらない。

「た、だい……しゅき」

「ボクも好きだよ。つきちゃん」


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