第14話 告白
きゅうちゃんは私の隣に座ると、シンデレラを頼んだ。
一口、それを飲む。
「あ、あのっ……」
「あ、あのっ……」
2人、同時にハモる。
「ま、まずは、きゅうちゃんからどうぞ」
「いやいや、ここはレディーファーストで月子ちゃんから」
「あなたもレディーでしょ」
「いや、それはその……まあ、月子ちゃんからにしてよ」
「きゅうちゃん、私、きゅうちゃんのこと、何も知らなかった。どんな仕事してて、年はいくつでとか、恋人の有無もしらない。ただ、きゅうちゃんがかわいくて、それしか見えてなかった」
「うん、うん」
「占い師やってることも知らなくて、怪しい商売してるって勝手に思い込んで、実際には占ってもらったことすらないのに、勝手にイメージだけで決めつけてた」
「うん」
「恋に恋してるだけで、きゅうちゃんを知ることをおろそかにしてた。ごめん」
「そっかあ」
きゅうちゃんはシンデレラをストローで半分まで飲み干す。
ストローに添えた指先一本一本が優雅に見える。
「いきなり、かんしゃくおこしてごめん。私不安だったの。本当の私を知ったら、きっと月子ちゃんは仲良くしてくれないと思って」
「そんなこと、ないよ!どんなきゅうちゃんも、きゅうちゃんだよ!私にとって、素敵な女の子だよ!」
「素敵な、女の子……かあ」
きゅうちゃんは噛み締めるようにつぶやく。
「私の本名はね、求村陽司。もとめるの求に市町村の村に太陽の陽、司るで司。そして、性別は体は男性だけど心の性別はクエスチョンなの。でも、恋愛は女性が好き」
「!?」
「でも、サトルさんとデート行ってたじゃない!」
「ああ、サトルさんね、あの人FtMだよ」
「FtM!?ってことは」
「元は女性だけど性転換で男性になった人」
「嘘でしょ!?ま、マジ……!?」
「なんか、気に入られてデート行ったけど……なんか、違うなって。今は、月子ちゃんが好き」
「…………困るよ。私、きゅうちゃんが女性だから好きだったのに。こんなの、ひどい」
「今は無理かもしれない。だけどいつか、僕のこと、好きになって欲しい。僕、待ってるから」
「僕とか言わないで。待たなくていい」
ふらふらとした足取りで店を出た。
きゅうちゃんが。
きゅうちゃんが……男……
ありえない。ありえないよ。
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