夏休み 肝試しと恋

木津根小

1

言い出したのが誰か、忘れてしまった。

その日時、場所は直ぐに決まった。


日時:8月12日 19時集合

場所:近所のお寺の境内。


これだけ聞けば誰でも解る。

夏休みといえば肝試し、だそうだ。


「リュウスケも行くだろ?」

そう聞いたのは、高校のクラスメートにして、幼馴染にして、腐れ縁(チャンスがあれば斬りたい)のゴウタだった。

俺はリュウスケ、市内の高校に通う男子高校生(2年生、彼女居ない歴17年)の17歳だ。

ゴウタとは幼稚園からの幼馴染。

いい加減、縁を切りたくて、ゴウタに内緒で受験する高校を選んだ。

が、しかし、入学式当日、ゴウタの顔を見て、顔が引きつった。


ゴウタは、何でも豪快に決める。

話し方も大胆、決め方も大胆。

他人の気持ちや予定など、一切考えない。

トーフメンタルの俺とは真反対で、何度となく泣かされて来た。

『リュウスケも行くだろ?』

と聞いているように思えるが、これは過去の経験からすると、決定事項の通達でしかない。


「で、ゴウタも行くのか?」

「ああ、もちろん。」

ワクワクした顔で、ゴウタが言った。

そして、携帯端末の画面を見せた。

そこには、この肝試しの参加者リストがあった。

そのリストの中に、「北原かのん」の文字があった。

同じ高校に通う、1つ年下の可愛い女子だ。

「まあ、暇つぶしに、参加するのも良いかもな。」

少し顔を赤くして言った。


「参加者は、俺達2年生4人と、1年生3人の、合わせて7人だ。」

ゴウタは、携帯端末を見ながら言った。

ついでに、

「墓場の7人、だな。」

とか、縁起でもない事を言っていたので、無視した。


「19時にお寺の境内に集合して、19時半から開始。

2人1組になって、境内の裏にあるお墓を回って帰って来る。」

そうだ。

「けど、そしたら1人、溢れるぞ。」

「ああ。

1組だけ3人で行くらしい。」

「で、組み合わせはどうやって決めるんだ?」

「いや、決めない。

というか、もう決まってる。」

そう言って、ゴウタがまた携帯端末の画面を見せた。


俺は1年生の女子の「田口ひなこ」ちゃんと組むらしい。

申し訳ないが、その子の名前は全く知らない。

それより「北原かのん」ちゃんは、と。。。

えっ、ゴウタの組むのか?

なんで?


「なあ、ゴウタ。

お前、最近、体の調子悪くないか?」

「いやー、絶好調だ。」

「宿題、溜まってるんじゃないか?」

「そんなモン、一夜漬けに決まってるだろ。」

「当日、お母さんに、用事頼まれて無いか?」

「無い、無い。

あっても無視する。」

くぅ~~、絶対に、参加するつもりか。


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