5分で読める淡い百合両片想い4
水色桜
第1話
吐く息が綿飴のように宙を舞う。改札に定期券をかざし、上りのホームに向かう。この町は人口が数千人しかいないため、駅のホームは上りと下りしかない。いつもの定位置で電車を待とうとゆっくり歩いていると、突然氷のようなものが首に当てられた。
「ひゃっ!ななに!?」
「あはは!やっぱりひとみの反応は面白いね。ひゃっだって。あはは!」
「もう朝っぱらどういう挨拶の仕方だよ?ゆゆ!」
「これはイヌイットの挨拶法で、今日も冷静なツッコミよろしくって意味だよ!」
今度は私がゆゆの首に手をつける。
「ちょっ冷たっ!冗談冗談だって!」
ゆゆはいつも私にちょっかいをかけてきたりする。一緒にいると終始笑いが絶えないのだが、正直疲れる時も多い。今日もまだ朝早くてテンションが上がりきっていないので、ゆゆのテンションは疲れる。そうこうしてるうちに電車が到着した。私たちの学校までは3駅、時間にして約25分ある。ゆゆが向かいの席に座り、向き合った状態で電車に乗った。
「ひとみ〜。今日の宿題教えて!」
「またやってないの?家でやってくればこんなギリギリの状況でしなくても良いのに!」
「分かってないな〜。このギリギリの状態から間に合わせる。これがプロの技というものだよ。」
ゆゆが物凄いキメ顔で言ってのける。
「ああそうかー。じゃあ頑張って。」
私はそれ軽く流す。
「ちょちょ待って!せめてツッコンでよ!それに英語苦手だから教えて欲しいんだけど。」
まあなんだかんだ言っていつも教えるんだけど。ほっとけない私も私なのだ。
「それじゃあこの英文の和訳からやっていこうか。I read this book yesterday. これはどういう意味?」
「レッドブルを飲んだらyesしか言えねえ!」
ゆゆがまたもや物凄いドヤ顔で言ってのける。
「どういう状況だよ!レッドブルやばい飲み物になっちゃうじゃねえか!これは『昨日本を読みました。』って言う意味だよ。」
「まあそう言うことを言いたかったんだよ。」
何故かしたり顔でゆゆが言う。
「次の英文I bought one tomato and two hamburgers.は?」
「トゥメイトゥをトムのヘッドにガーン!」
「どう言う状況だよ!」
私は笑いを堪えられなかった。
「はあはあ。これは『トマト一個とハンバーガー2個を買いました』って言う意味だよ。ここまで違うといっそのこと才能だよ。」
「そうだろそうだろ!」
「褒めてないんだけど...」
ゆゆの珍回答に何度も笑わせられながら、あと3分で着くというところで宿題が完成した。駅に着くことを知らせるアナウンスが聞こえた時。
「いつもありがとう。」
とゆゆが小さく言ったような気がした。
「今何か言った?」
「んーん何でもない!」
なんだかんだ言ってゆゆと一緒にいる時間が1番好きなのだ。
5分で読める淡い百合両片想い4 水色桜 @Mizuiro__sakura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます