5分で読める淡い百合両片想い1

水色桜

第1話

「・・・ねえ・・・起きて・・・もう帰らないとだよ。」

目をゆっくり開けるとふわふわの黒髪が目に入る。テストに備えて夜更かしをしすぎたみたい。

「ごめん。気づいたら寝てた。」

時計を見るともう6時を過ぎていた。一緒に帰ろうと約束していたとはいえ、わざわざ地学室まで来てくれるなんて。本当に良い友達を持ったものだと心の底から思う。友達と言うとちょっと胸がチクリとするのは遥には秘密だ。開きっぱなしになっていた天体写真本を急いで鞄にしまい、遥に駆け寄る。

「そんなに急がなくても大丈夫だよ〜。それにしてもよく寝てたよね。ちょっと涎も出てたし。」

「嘘っ!?恥ずいんだけど!」

「あまりに気持ち良さそうだから、起こすか迷ったよ。」

下駄箱で靴を履き替え、外に出ると、冷気が雪崩のように押し寄せてきた。

「うう〜寒いね。ふゆみ〜ちょっと暖をとらせてね。」

そういって遥が後ろからぎゅっと抱きついてくる。

「ちょい動いづらいっての。まあ確かにあったかいけど。」

遥が触れた部分がマグマのような熱を持ったように感じる。これはきっと遥の体温が伝わってるからだ。きっとそう。そのはず。横を見ると遥かのほっぺがリンゴのように赤くなっていた。

「遥大丈夫?ちょいほっぺが霜焼けになってるっぽいよ。ほらあっためてあげる。」

遥のほっぺに手の平をくっつけて温めようとする。

「あれ?そんなに冷たくなくない?」

何故か遥が無言で小さく頷く。きっと私の手が悴んでただけなのだろう。今日もまたたわいもないじゃれあいをしながら帰路につく。こんな時間が心に薄紅色を灯しているのは遥には秘密だ。

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