第一話 豆知識はとても肝心(食事編)
(ガチャ)
「ただいま~」
「おかえり♪」
いつものように、あったかい笑顔で出迎えてくれる彼女。
「夕飯、お願いできる?」
「もちろん♪」
俺の心にはひとつの思いがあった。今日こそ、食中毒を回避する!
俺はポケットの中の胃薬のビンをぎゅっと握りしめた。
「準備できたよ♪」
「待ってました!」
促されて、席に着く。
今日の夕飯は、ご飯に汁物、サラダ、かに玉、焼き魚……。
「かにたま……、卵料理か」
たまごは日持ちしない食材だしとても怪しい。カニ、もカニカマかも知れないし魚介のカニを使ってる可能性もある。魚介だとしたら傷みやすい。
「かに玉、おいしそうだね! いっぱい卵使ったんじゃない?」
「そうなの♪ 今日、買い物に行ったら近くのスーパーでセールがあってね♪ その時に買ったカニカマとで作ったの♪」
セーフ、セーーーーーフ!
かに玉は大丈夫そうだ。
サラダに使われてる野菜も新鮮そうだし、焼き魚もグリルで焼いただけで難しい調理工程はない。
大丈夫そうではある……。
「お、インゲン! このサラダ、インゲンの歯ごたえがアクセントになってて美味しいな!」
「でしょ♪ いっぱい食べてね♪」
(もぐもぐ……)
「うん、普段のサラダもおいしいけど、インゲンが入ることで丁度良い歯ごたえが。それにドレッシングと合いまった時の味のアクセントが絶妙にマッチしてる!」
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした♪」
全部食べ終わった。
きれいに美味しくいただけた。
彼女の料理の腕も徐々に上がってきてるのかもしれない。
「ふぅ、満足満足~。さて、食器片づけるの手伝うよ。よっこいしょ……ってあ、あれ……、なんか体調が……」
襲われる吐き気、それに腹痛、あ、これやばいやつだ。
目を開けてられないくらいの痛みに耐えつつ、俺は遠くで救急車のサイレンの音を聞いた。
デジャブ。
また躱せなかった。
また避けられなかった。
俺は胃薬を服用しつつ、耐える。
「え、また私やっちゃいました?」
彼女のそんな声は、なんか事態に慣れてきてるような声色を感じるがきっと気のせいだろう。
彼氏がこんなに苦しんでいるのだから。
だよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます