第5票:一生の不覚! 県議会議員選挙!!
明日はほぼ一年振りの投票日。今回は県議会議員選挙だ。
果たして伊藤くんや浅野さんは一番乗りを目指して投票所へやってくるだろうか? 何か用事が入ったり情熱が薄れたりしていてくれればありがたいのだが……。
――いや! 僕は何を考えているんだ!
他人がどうとかじゃない。僕自身がどう行動するかが大切だ。僕が投票所一番乗りとなるように努力すれば良いだけの話。それにライバルがいるからこそ、僕の心も熱くなる。
「っ!? う……く……。興奮して叫んだからか、少し目まいが……」
思わず僕は額を手で押さえる。でもこれくらいなら大丈夫だ。
さて、今までに得られた情報から考えると、自宅を六時に出発すれば充分に一番乗りを狙える。ただ、それだと不安が大きいのも事実だ。数分の余裕では安心できない。
やはり優先すべきは『投票所一番乗り』という栄冠を得ること。ゆえに僕は今回、午前五時三十分に自宅を出発することに決める。そしていつものように準備を整え、ベッドへ横になる――。
◆
投票日の朝、僕は走っていた。ひたすらに投票所を目指して走っていた。
なぜなら僕は不覚にも寝坊してしまい、自宅の出発が遅れたからだ。最近は大学のゼミの研究やバイトが立て込んでいたこともあり、自分が思っていた以上に疲労が蓄積していたらしい。
眠る直前の目まいはその兆候だったのかもしれない……。
現在の時刻は午前六時二十分。これだと一番乗りは難しくても、ゼロ票確認は先着三人までなのでなんとかなるはず。もちろん、タイミング的にギリギリなのは否めないが。
やがて僕は投票所が見える交差点へと駆け込む。視線の先、地域公民館の出入口にはやはり何人かの姿がある。
先頭はどうやら伊藤くん。彼の『次の選挙も早く来る』という言葉は本当だった。そして二番手は浅野さん。相変わらず元気そうでなによりだ。
…………。
――そして三番手は水谷さん。
それを認識した瞬間、僕の頭の中は空っぽになった。まるで投票箱の中のように……。
これで今回はゼロ票確認の権利を得ることが出来ないことが確定となる。
でも寝坊するという大失態をやらかしたということもあり、この結果になんとなく納得している自分もいる。
悔しい……悔しい……でも……仕方ない……。
(つづく……)
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