ゼロ票確認ガチ勢 ~権利と恋と情熱と♪~
みすたぁ・ゆー
第0票:投票所を目指して
僕は走っていた。ひたすらに投票所を目指して走っていた。
吐き出した息は白く、直後にそれは霧散して後方へと流れ、空気と同化する。その瞬間、呼気に含まれる水分子の一つひとつが朝日の光を受け、キラキラと輝いている。
一方で吸い込んだ空気は草木や土、朝露などの匂いに包まれていて、なんとさわやかなことか。肺や喉の奥を清らかに冷やし、体内から穢れが祓われていく。
ちなみに街は静まり返ったままで、依然として薄暗い。すれ違う通行人の数もわずかだ。ただ、そのわずかな人影が全て“ライバル”のように見えてきて、今の僕の心を焦らせる。
――それから程なく僕の前方には高層マンションが見えてくる。そこを通り過ぎてすぐの交差点を右折した場所にあるのが地域公民館。僕の居住地における公職選挙の投票所だ。
ゆえにその交差点を曲がった瞬間、僕の運命は決することになる。その位置まで行けば公民館の出入口が見えるから。
そこに誰もいなければ、
でももし人影があったなら、悔しさを噛みしめながら数か月の時を過ごすことになるだろう。
もちろん、数か月という期間はあくまでも現時点での予定であって、衆議院の解散や議員辞職などの事態が起きればその限りではないが……。
――さぁ、どうだっ!?
期待と不安を胸に僕は交差点に到達! 自宅からの猛ダッシュによってフル稼働中の心臓が、限界を突破して大きく高鳴る。全身が熱い。興奮は最高潮に達している。
右折しながら僕は数十メートル先を真っ直ぐ見据える。
その先に広がっていた景色は――。
(つづく……)
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