RPGにR(リアル)さを求めてはいけない! ~ド外道が自由度高いRPGをやったなら~

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

リベルタスファンタジーは最高のゲームだった


 『リベルタスファンタジー』

 ゲーム機と画面に向き合うゲームの時代が終わり、脳とゲーム機が非侵襲的触れるだけで情報のやり取りを行い、ゲームを出来る様になった頃。それ神作品は現れた。


 ジャンルはRPG。『主人公となって魔王を倒せ』という、実にありふれたもの。

 しかし、このゲームは後に技術的特異点とまで呼ばれる様になる。


 というのも


・ゲーム内の自分の姿はイメージするか写真情報を入力すれば一発で出来上がり。ネタ極振りの見た目から本人の見た目100%再現から理想の自分までバッチリ再現!


・侍っぽく振舞いたいから語尾『ござる』にしたい?悪役ムーブを徹底したい?ならそう話すイメージを持ってゲーム内で話せばOK。NPCゲーム内キャラもそれに対応した反応してくれるよ。AIってすげー。


・『装備の性能は良いけどデザインが……』・『ここで振り下ろしじゃなくてタックルして次のコンボに繋げたいんだよ…』なら自分で作ろう!素材を集め、鋳造・魔法の技術スキルを上げれば理想の装備だって作れるし、練習すれば自分だけの完全オリジナルスキルが作れる!


 自分のイメージ通りの動き、イメージ通りの言葉、イメージ通りの装備にバトルスタイルに……そんな理想ゲームを抱き、技術の前に敗れ去ったゲーマー達は空を見て、涙を流し、ゲーム制作者創造神に感謝した。そして、転売ヤーを撃滅して発売日を待った。

※なお、転売ヤー撲滅に警察上層部の人間待ちわびた有志らが一役買ったが、発売日は一斉に有休を消化した。



 「いやー、下手な小説とかゲームより面白い事って起こるもんだね。」

 6畳1部屋にキッチンとトイレと風呂が着いただけの部屋。部屋には布団、PCと数冊の紙の本があるだけ。

いつもはそれだけなのだが、今日は違う。時季外れのクリスマス感満載の包装紙に特大リボンが結びつけられた大き自己主張激しな箱いプレゼントがメッセージカード付きで枕元に置かれていた。


 『ゲームって創ってみたい。』『じゃぁ作れば?出来たらテストプレイくらいなら協力するよー。』『ッ!』

 10年も前の話。何て事のない昼食の最中に起きた友人との会話の抜粋。

 ボクは『出来たら面白そー。』とだけ思っていたが、友人は目をまん丸くして驚き、そして数か月後には創ってみせた。

 風景が雑。BGMも無い。バグだらけ。出涸らしのストーリーにシステム。古臭いRPGだったが、それでも完成まで作ってみせた。

 一通りやってみてからまた昼食をした時に答えた。

 『ん-、先ずはゲーム作りの基礎からやって技術面は頑張って。その辺はボクには分からないから。

 あとはストーリー。このゲームには致命的に選択肢が無い。 はい/いいえ も無いまま勇者が魔王退治するのは無理がある。

 選択肢も何もないのは奴隷や脅迫の類だ。ま、選択肢って事実上あってないようなものだけど。ま、今の技術じゃ選択肢を臨機応変に作って自由度高いゲーム無理か。』

 『ありがとう…!』

 目をまん丸くして、キラキラした顔でお礼を言われた。

 それから暫く、素人のゲームをやっては感想と改良点を挙げていった。

 徐々に風景が良くなって、音楽が付いて、バグを見つけるのが難しくなって、そこそこ面白いお話やシステムのものが出来るようになった。偶に品質が上下することもあったけど、最初に比べて形になっていた。



 あれから何作目か知らないが、第X作目が目の前の箱に包まれている。遂に友人はやった・・・のだ。

 ちょこちょこ作っているものが送られていたので遊んでいたし、『なんか最近のやつは売ってそうだな。』と思っていた・


 『リベルタスファンタジー』

 噂には聞いていたゲーム。それが友人の第X作目。

 『趣味に付き合っていたら友人がゲーム制作者になっていた件』って名前の小説虚構?ノン、これはれっきとした現実現実


 『ありがとう。是非楽しんで下さい。』

 メッセージカードにはそれだけが書かれていた。

 友人は辿り着いたらしい。ちょっと鼻が高い。

 しかも連絡を貰った時にこうも言っていた。

 『お前の夢、叶えたから!』

 ゲームの宣伝を見てその意味が分かった。



 「自由度高いゲームは欲しかったけど、ここまでやるの…サイコーじゃん。」

 びりびりに包装を破いて中身を取り出す。

 出てきたのはメカメカしい黒のアイマスクとゲームソフトが一つ。

 アイマスクの目の部分の外側にソフトを入れる部分があるから、多分ここに挿すんだろう。

 あとは適当に布団に寝そべってアイマスクをセット。電源を入れるとレッツVR出来る…のかな?

 「さて、じゃぁ友人からのプレゼント、さっそく楽しませて貰おう。」

 スイッチを入れると、アイマスクの黒一色の景色が変わっていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る