第10話 転機
善は急げ。
宴会を放り投げてvuのホームにいる。
シンプルな白い部屋。ここでも作業が出来るが長時間集中できないので、いつもの場所、ブックマークしてある「黒の輪」に飛ぶ。
「いらっしゃいませ、ってロイさん大丈夫だったんですか?」
「マスター、心配させてすみません。もう大丈夫です。ちょっと二階の空いてるところで作業しても?」
ロイはマスターに許可を取り、作業場に向かった。暗い室内。ここは非常に狭く落ち着く。ホログラムキーボードを叩き、キメラ作成に取り掛かる。ラボのAIを起動させ、ウィンドウを開く。そこに表示されたのは、この前作った食用の動物たちだ。新規作成から設定操作を始める。
銭湯でシゲさん達と地ビールを飲んで、思いついたのは"見た目に拘らず、そして『日陰』に合うもの"。
それは……
ベースとなる動物をラボのシステムに入力する。
入力した動物は、鶏。それだけだ。
思えば研究データにこだわり過ぎたのだ。もっとシンプルでも良いじゃないか。遺伝子を組み替えていく。
ホログラムに映し出された生物は、足が八本の鶏だった。
名前はコケモモという。
完成データを見て満足する。
***
茨の湯での宴会から2か月後、成長しきったコケモモ達は檻の中で大人しくしていた。ロイはその様子をタブレット越しに見つめる。
前のプロトタイプのコケモモ5匹も問題なく成長し、それは第一回コケモモ料理大会で使われた。決勝戦は非常に熱い戦いだった
「ナンバー1から20まで安定して成長しましたね。これなら今日のイベントには十分でしょう」
「はい。この調子でどんどん増やしていきましょう」
ロイは茨ヶ丘のラボで実験を重ねていた。
昨日は雫の父親である市長と対談し、市を挙げてバックアップすることが決まった。また、市をあげて『日陰』の生産を増やすことを約束された。
自分が作りたいものを作れている。その喜びは筆舌に尽くし難いものだ。
今日はラボで研究の成果を発表すると同時に、富裕層を招待したパーティーをするのだ。パーティーでは日陰とコケモモ料理を振る舞う予定だ。
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