第2話

 しかし、私には何が起こったのか理解できないでいた。

そんなことを考えているうちに、目の前にいる黒ずくめの男が話し始めた。

「まずは自己紹介をしよう。俺はアルポンズ・デュ・ルアンドラーシュ。お前たちを殺すために雇われたヒットマンだ。そしてこっちの女が……」

「ニーナ・ヴァンサンですわ。よろしくお願いしますね♪ あなたたちが死ぬ前に仲良くしてあげますから安心してくださいませ」

そう言って二人は不気味な笑みを浮かべるのであった。

(なんだ? なぜ私が殺されなければならない?)

私は混乱していた。

自分が殺される理由が全く思いつかないからだ。

すると黒服の男、アルポンズがまた口を開いた。

「俺もお前たちに聞きたいことがあるんだがいいかな?」

「まぁ、別に構いませんけど……」

私は警戒しながら返事をした。

正直、こいつが何を考えているのかわからないのだ。

「それじゃあお言葉に甘えて聞こうか。お前たちはどうやって死んだと思う?」

「それは……車に轢かれて死にました」

私は少し考えたあと答えを出した。

それ以外に特に理由はないと思ったからである。

「ふむ……。やはりそうか。ではもう一つ質問があるのだが、ここへ来る前の記憶はあるかい?」

「いえ……それが全くありません」

「そっか……。なるほどねぇ~。記憶がないのかぁー」

「……っ!?」

まさかと思いつつも聞いてみた。

「あなたは何を知っているんですか?」

「おっと失礼。驚かせてしまったようだな。ただ、これから起こることを予測するためにちょっと聞いただけだ」

そういうことなら仕方ないか……。

しかし、一体どういう意味なのか……。

「さてと、時間もないことだし早速始めるとするか。おい、やれ!」

アルポンズは後ろに控えていた部下らしき男に向かって命令した。

「わかりやした兄貴!!」

そう言うとその男は懐からナイフを取り出しこちらへ向かってきた。

「死ねやあああ!!!!」

私は咄嵯のことで反応できなかった。

このままでは刺される! そう思ったときだった。キンッ!!

「ぐあっ!!!」

男の持っていたナイフが弾け飛んだ。

どうやら私の隣にいたニーナさんが何かしらの攻撃を行ったらしい。

「あら、ごめんなさい。手が滑ってしまいましてよ?」

ニーナさんは笑顔でそう言った。だが目は笑っていないように見えた。

「くそっ! よくもやりやがったな!!!」

今度はもう一人の男が剣を抜き斬りかかってくる。

「させませんよ!」

すかさずアルポンズが銃を放つ。

バンッ!! ドサッ……。

「よし、これで終わりだ。今度こそ始めようか」

「……」

「ん? どうかしたのかね? 怖気づいて声も出なくなってしまったのかな? はっはっは! 大丈夫だよ。すぐに痛みなんて感じなくなるさ!」

「そうですか……。それならよかったです」

「あぁ、心配してくれてありがとう。でももうすぐ終わるから安心してくれたまえ」

「いえ、私の方こそ助かりました」

「……?? 何のことだい? それよりも早く始めてしまおう。君たちも早く終わらせたいだろう?」

「はい。私も早く復讐したいと思っていたところです。だから……お話ししましょうか?」

「あぁ、構わないよ。どんな話を聞かせてくれるんだい?」

「私を殺した犯人についてですよ。それと私自身のこともね……」

「ほぅ……。興味深いね。ぜひ聞かせてもらおうじゃないか」

「まず初めに言いたいことがあります」

「なんだい?」

「私はあなたたちの仲間ではありません」

「ほう……。それで?」

「あなたたちは勘違いしています。私はあなたたちのような人殺しをするような人間ではないのです」

「なるほど。あくまで自分は無関係だと主張をするわけか……」

「はい。それに証拠だってあります」

「証拠? そんなものどこにあるというんだ?」

「ここにいる二人が証人になってくれます。ね? そうだよね?」

私は二人に問いかけた。

すると二人はゆっくりとうなずいた。

「なんと……驚いたな。まだ生きていたとは……」

「生きてちゃダメでしたか?」

「いや、そんなことはないよ。ただ、君たちが死んでしまったと思って悲しく思っていただけさ」

「それは申し訳ありませんでした。ですが、こうして私は生きているので許してもらえると嬉しいですね」

「あぁ、もちろんだとも。さっきは疑ってすまなかったな。お前たちは俺たちの仲間だ。これからは仲良くやっていこうじゃないか」

「はい。よろしくお願いします」

私たちは握手を交わした。

「じゃあ話を続けてくれ」

「わかりました」

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