見習い魔法使のエリー
@ggyue
エピローグ
「いいかい、エリー。魔法はね、世界をも変える力を持っているのよ。」
心地よい暖かさの中で、古い記憶を思い出した──。
「エリー!来なさい。」
「はぁーい、お師匠様!」
あ、寝坊した。お師匠様の声で慌てて目を覚ます。苺色の髪を手ぐしで梳かす。壁に掛かってる、瞳と同じ茶色のローブととんがり帽を取り、急いで部屋を出た。トントンとリズムよく階段を駆け下りる。おっとっと、少し踏み外した。
「キャアー!」
ドッカーン!と大きな音を立てて、エリーは階段から落ちてしまった。
「ほらほらぁ、慌てない、慌てない。」
目を上げると、お師匠様が手を差し伸べてきた。どうやら、転んだ勢いでそのまま一階にたどり着いたらしい。お師匠様の手をとり、エリーは立ち上がった。
「それで、お話とは何でしょう……?」
手で服についたホコリを払いながら、エリーはお師匠様に問いた。前日の夜に、明日話しがあると聞いていたのである。
「うふふ、何だと思う?」
「お師匠様の蛇の抜け殻コレクションの話ですか?なら、失礼します。」
「ま、待ーってよ。ちーがーうーからー!」
お師匠様こと、アーニャ・クロエヒッズはエリーの腕を慌てて掴み、否定した。この女、蛇の抜け殻を集めるという変な趣味があるのである。
「抜け殻の美しさに関しては後で語るとして、エリー、あなたの独り立ちについてよ。」
「独り立ちっ!?」
目を大きく見開いたエリーは、食いつくようにアーニャに尋ねた。
「でも、いいのですか?私なんかまだまだ半人前で……。」
「いいのよ。あなたは十分に資格があるわ。」
アーニャは優しく微笑んでいた顔を険しくする。
「あなたも知っているでしょう?見習い魔法使いが独り立ちするには、師匠が与えた試験をこなさなきゃいけないの。今日はその試験についてよ。」
エリーは息を飲む。過去に、師匠の与えた試験で命を落とした者も多いと聞いていたからだ。
「あなたの試験は……。じゃーん、最果ての神殿にたどり着くことです!」
「最果ての、神殿……。」
最果ての神殿、文字通りこの国の最果ての地にある、謎の神殿である。旅路には数々の難関があり、辿り着いた者は少ないという。
「カンタンでしょ?」
エリーは思わずため息をついてしまった。自分ごときが容易に辿り着ける所ではないと知ってるからだ。
「出発は今日よ。」
「今日!?」
いくらなんでも急すぎる。まだ旅支度もできてないのに。
「ええ、今日よ。」
アーニャは微笑んだ。エリーはまたしてもため息をついた。
見習い魔法使のエリー @ggyue
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