第7話 夏

クーラーが冷えすぎている。


いつもの部屋がいつもの部屋じゃない

感覚だけ続いてる。


先輩は私のワンピースを着たまま、

着たことを忘れてしまったかの

ように話した。


彼女との話しをした。

彼女は少し遠くに住んでいて、

クラスが一緒らしい。

夜は彼女のところへバイクで通っている

そうだ。


お財布には

彼女が描いてくれたらしい似顔絵が入っていて

私に見せてくれた。

下手うまな可愛いイラストだった。

何かの切れ端みたいなメモ紙。


こんなものも折り畳んで大切にしてるんだ、

先輩。


話を聞いていると

秋川先輩と彼女さんは、

クラスを代表するような、

おしどりカップル、

という感じだった。


すごく、安定していそうで、

ラブラブなんだな、

と心底思った。

 

先輩が来てから、

ソファも、カルピスのグラスも、

スマホも、テーブルも床も、

違う光り方をしている。




「彼女さん、うちに来たこと知ったら

大丈夫ですかね、、?!

、、。」


何言ってんだろう、。

大丈夫だよ。

何も関係ないじゃん。


「全然大丈夫だろ、知るよしもないよ。」


大丈夫、後輩!後輩だもの!」


けっこうショックで

何も言い返せなくなってしまった。


その様子を察してか、

秋川先輩が明るくちゃかす。


「大丈夫だよ、、

いや、やっぱやばいかも、

知ったら発狂するかも!


大丈夫、

おまえはここでの彼女!

2号!

大丈夫。」


私のワンピース着ながら、

先輩は何言ってんだろう。


気を遣ってもらっている。


「夏が終わったら

もう、他人みたいになるんでしょうね(笑)

知らない人、みたいに!あはは」


何言ってんだろう。

本当にそうなりそう。



秋川先輩は優しいからそう明るく笑い飛ばす。

他意はない。


リップサービスなんだよ。


先輩はお人好しで優しいから。


つけ込んじゃいけない。


それじゃ私に一方的な好意を寄せる

暴力的な男たちと変わらない。


私たちは先輩と後輩。ただの。


二人で話し倒して、

夕方先輩は帰っていった。


彼女のところへ行くのかな。


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