破 破滅的恋愛願望

「運命の人って信じますか?」

 仕事帰りに声をかけてきたヤバい女、その第一声がこれだった。

 曰く、一目惚れだったという。

 宗教勧誘だと思って逃げた俺を、家まで追いかけてきたこの女は、冷蔵庫の余り物でそれなりに美味い夕食をこしらえこう言った。

「私も、運命なんて信じる柄じゃなかったんですけどね。でも、あなたをひと目見て思ったんです。私は、この人に出会うために生まれてきたんだって」

 とびきりの美人が俺みたいな冴えない男にこんな事を言っている。

 怪しくて仕方がない。

 だから俺は、やんわりと拒絶の言葉を吐いた。何度も何度も、遠回しに彼女を遠ざけようとしたが、その試みは全て失敗に終わった上に見抜かれていた。

「疑われるのも仕方がないと思います。でも、私は運命を感じているんです。この出会いを、絶対に逃しちゃ駄目だと思うんですよ」



 その日から、彼女は俺のストーカーになった。

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